カッサンドル(読み)かっさんどる(英語表記)A. M. Cassandre

百科事典マイペディア 「カッサンドル」の意味・わかりやすい解説

カッサンドル

フランスグラフィックデザイナー本名アドルフ・ジャン・マリー・ムーロンAdolphe Jean-Marie Mouron。ウクライナハリコフ生れ。1915年パリに出て美術を学ぶ。1926年アリアンス・グラフィック社を設立アール・デコの時代に呼応した幾何学的構成のデザインにより,ポスター史に一時代を築いた。代表作にデュポネ酒,鉄道広告〈北星号〉,トランスアトランティック社の〈ノルマンディー号〉のポスターなどがある。1930年代以降は舞台美術も手がけた。
→関連項目サビニャック東京都庭園美術館ブロドビッチポスター

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カッサンドル」の意味・わかりやすい解説

カッサンドル
かっさんどる
A. M. Cassandre
(1901―1968)

フランスのポスター・デザイナー、画家。本名Adolphe Jean-Marie Mouron。ウクライナのハリコフ(現、ハルキウ)で生まれ、1915年からパリに定住。斬新(ざんしん)な幾何学的構成で、1920年代から1930年代にかけてのフランスのポスター界に新風をもたらした。その手法は立体派風とも純粋主義風ともいわれるが、むしろポスターからの「絵画性」を除外して、ポスター独自の世界を築いた点に意義がある。単に構成的であるだけでなく、洋酒会社のポスター(1932)などの奇抜な着想によっても知られている。1936~1938年はアメリカで仕事をしたが、帰国後はポスター作家の道を捨て、絵画と舞台装置に専念した。

[高見堅志郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カッサンドル」の意味・わかりやすい解説

カッサンドル
Cassandre

[生]1901.1.24. ハリコフ
[没]1968.6.17. パリ
フランスのポスター作家,デザイナー,舞台装置家。本名 Adolphe Jean-Marie Mouron。 1915年にロシアからパリに来て美術を学び,22年以来ポスターを制作。キュビスムの手法などを取入れた斬新なスタイルで『ピポロ』 (1924) ,『エトアール・デュ・ノール』 (27) ,『デュボネ』 (32) ,『レ・バン・ニコラ』 (35) などのポスターを描いた。 33年以後舞台装置を次々と手がけ,36年には活字書体ピーニヨのデザイン,50年には商船プロバンス』号の室内壁画を完成した。

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世界大百科事典(旧版)内のカッサンドルの言及

【アール・デコ】より

…家具ではリュルマンJacques‐Émile Ruhlman(1879‐1933),シューLouis Süe,マールAndré Mare,ジュールダンFrancis Jourdain,グルーAndré Groultなどが,建築ではマレ・ステバンRobert Mallet‐Stevens(1886‐1945),ル・コルビュジエとオザンファンらが,ガラスではマリノMaurice Marinot,ラリック,デコルシュモンFrançois‐Émile Décorchemontらが,それぞれ機能性と装飾性の両極を一つにまとめた新しいデザインをつくり出した。30年代になるとデザインはより機能主義的となり,流線形の傾向を強め,それはカッサンドルCassandre(本名Adolphe Jean‐Marie Mouron,1901‐68)の汽車や船のポスターによく表れている。アール・デコとその時代風俗は,ナチスの台頭と第2次大戦によって埋もれてしまったが,70年代以来,現代都市文化の始点として再発見されつつあり,同時代のバウハウスやロシア構成主義との関係も今後確かめられなければならない。…

【ポスター】より

…カッピエロやホールワインL.Hohlwein(ドイツ)はこの過渡期に位置している。アール・デコのポスターを代表するのはカッサンドルCassandre(本名Adolphe Jean‐Marie Mouron。1901‐68)で,代表作《北星号》に見られるように,簡潔な直線的フォルムによる構成と片側をぼかす色調,表現する対象を大胆にイメージ化するやり方などが彼の特徴である。…

※「カッサンドル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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