カマイルカ(英語表記)Lagenorhynchus obliquidens; Pacific white-sided dolphin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カマイルカ」の意味・わかりやすい解説

カマイルカ
Lagenorhynchus obliquidens; Pacific white-sided dolphin

クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科カマイルカ属。体長約 2.5mに達し,雄は雌よりわずかに大きい。最大体重は約 180kg。出生体長は推定約 1m。体色は背部が黒色腹部は白色,体側は白に近い灰色である。体側には,尾柄部から背部前方に向ってはけではいたようなねずみ色の模様があるほか,口角から胸鰭 (むなびれ) ,腹部側面を通って肛門部にいたるきわめて明瞭な黒色帯がある。口唇部は黒く縁どられる。背鰭前縁は黒色,後縁は白色または白色に近い淡色である。胸鰭と尾鰭は両面ともに黒色。体型は紡錘形。噴気孔は1個で頭部正中線上にある。嘴 (くちばし) は短く小さいが,前頭部との境は明瞭。尾柄部は急に細くなり,上下のキール (稜状の隆起) は著しい。背鰭はかなり高く,体の中央に位置し,鎌状に後方へ傾いている。先端がとがった直径3~4mmの小さい円錐歯が,上下顎骨に左右 23~36対ある。集団を好み 100~1000頭の大群をなす。セミイルカハナゴンドウなどと混群をなすことも多い。波に乗ったり,胸鰭を振ったり,体をきりもみ状に回転させながら跳躍したりする。繁殖期は夏。小型の群集性魚類やイカ類を捕食する。群れで餌を密集させ摂餌する。北太平洋およびその付属海に生息しており,深海外洋域に広く分布するが,大陸棚や深海域が近接した沿岸域にも出現する。分布の南限は台湾ならびにカリフォルニア湾湾口である。日本では追込漁や突棒漁業毎年 100~1000頭程度捕獲されている。イカ流し網による混獲がきわめて多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「カマイルカ」の意味・わかりやすい解説

カマイルカ (鎌海豚)
Pacific white-sided dolphin
Lagenorhynchus obliquidens

歯クジラ亜目マイルカ科の哺乳類。北太平洋の温帯域に多い吻(ふん)の短い小型イルカ。成体で2.2~2.3mに達する。背面は黒褐色で,体側から腹面にかけて白い。口角から胸びれ基部,肛門を結ぶ黒条がある。前頭部は細くのび,吻に連なる。吻は短いが,前頭部とは溝でへだてられ,境は明りょうである。歯は上下左右それぞれ23~33本。体のほぼ中央に大きな背びれがあり,高さは体長の9%前後,後縁は鎌の刃状に灰白色なのでこの名がある。成熟した雄では背びれは後方にいちじるしく湾曲し,先端が垂れ下がる。日本近海では東シナ海,潮岬~オホーツク海南部に分布する。夏の北太平洋の沖合には北緯41~47度に帯状に分布している。1m前後で生まれ,1年ほど乳を飲み,雌雄とも8~9歳で性成熟に達する。数十~数百頭の群れをなす。スジイルカと同様成長段階によって,別の群れをなして生活するらしい。アジ,サバ,イカなどを食べる。第2次世界大戦後の一時期を除き漁業対象とはなっていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カマイルカ」の意味・わかりやすい解説

カマイルカ
かまいるか / 鎌海豚
Pacific white sided dolphin
[学] Lagenorhychus obliquidens

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目マイルカ科のハクジラ。体長2.4メートル、体重130キログラムぐらいになり、日本近海に多く、ときに数百頭の群れをなして回遊する。背びれの後縁が鎌(かま)の刃のように白くみえることからこの名がある。体の背面は黒色、灰色の体側と白い腹面との間に黒色の一線があり、くちばしが非常に短いのが特徴である。追い込み網で捕獲され、食用になるほか、水族館で飼育され、動作は敏速でよくジャンプする。歯は上下各列に23~33本。脊椎(せきつい)骨数は73~78個である。

[片岡照男]


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