カマツカ(英語表記)Pseudogobio esocinus esocinus

改訂新版 世界大百科事典 「カマツカ」の意味・わかりやすい解説

カマツカ (鎌柄)
Pseudogobio esocinus

コイ目コイ科の淡水魚。スナモグリ(岩手県ほか),カワギス(埼玉県),ソウゲン,ソウゲンボウ(群馬県など利根川水系),ダンギリボ琵琶湖)などの地方名がある。北海道,青森県を除く日本のほぼ全土朝鮮半島などアジア大陸北東部の一部に分布。川の中流域や水の澄んだ湖の砂底または砂れき底にすむ。全長は雄11~17cm,雌14~22cm。体は細長くほぼ円筒形で腹面は扁平,眼は頭の背側に,口は小さくて下方を向き,水底にすむのに適応した形態となっている。上下の唇にはいぼのような小突起が房状に密生している。口ひげは2本。この特異な構造の唇を水底に突っ込んで砂底または砂れき底の昆虫類の幼虫などをいったん砂ごと口の中に入れて,砂は鰓孔(えらあな)から吐き出す習性がある。つねに水底近くで生活し,とくに砂底に全身で潜入し,または両眼だけ砂上に現して休息する場合がある。産卵期は5~6月で砂れき底に産卵する。肉は白身で煮付け,てんぷらなどにする。味はやや淡白。
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カマツカ (鎌柄)
Pourthiaea villosa Decne.var.laevis Stapf

バラ科の落葉低木で,高さ5mほどになり,丘や山地に生える。樹皮は黒みをおびる。葉は質うすく,互生して,長楕円形,ふち鋸歯がある。両面ほとんど無毛のものをカマツカ,葉がより大きくて厚く綿毛の多いものをワタゲカマツカ,それらの中間のものをケカマツカといい,変種として区別する。花は4,5月ごろ咲き,複散房花序,花弁は白く,5枚で円く,おしべは20本。果実は楕円形で,秋に普通は赤く熟する。北海道から九州まで見られ,朝鮮や中国大陸にも分布する。カマツカは西日本に多い。材が堅くて折れにくいので,ハンマーの柄にされたり,また鎌の柄になるからカマツカ(鎌柄)の名がある。また,別名をウシコロシとかウシノハナギともいうが,これは牛の鼻に綱を通すとき,孔をあけるのに使われたり,また鼻環にされるためである。若芽や熟した果実は食べられるし,盆栽や庭木にされることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カマツカ」の意味・わかりやすい解説

カマツカ
Pseudogobio esocinus esocinus

コイ目コイ科の淡水魚。体長 15cm。体色は淡黄灰色で,背方は濃く,腹方は淡い。体は筒形に近く,尾部はやや側扁する。唇には肉質突起が多数ある。水底の昆虫の幼虫を餌とし,胸鰭を広げ水底に定座,また砂中にもぐる。北海道,青森県と秋田県を除く日本全域,朝鮮半島,中国北部などに分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のカマツカの言及

【木】より

…もちろん,このような製材・加工工程を経た利用のほかに,個々の樹種の特性に応じて幹・枝の原形そのままに利用することも多い。バラ科のカマツカ別名ウシコロシの名は硬く弾性のある材が鍬や鎌の柄(束(つか))やウシの鼻輪に使われるところから生じた。ハギ類やキブシなど株立ちになる低木は炭俵のふたやすだれに供され,またマンサク類はねじって薪やものを縛るねそとして用いられるが,とくに五箇山(富山県)・白川郷(岐阜県)の合掌造の骨組みの結合には最良の材料とされた。…

※「カマツカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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