カヤネズミ(読み)かやねずみ(英語表記)harvest mouse

翻訳|harvest mouse

改訂新版 世界大百科事典 「カヤネズミ」の意味・わかりやすい解説

カヤネズミ (茅鼠)
harvest mouse
Micromys minutus

ススキなどおもにイネ科の草の茎の間に葉で球形の巣をつくる小さなノネズミ。齧歯(げつし)目ネズミ科の哺乳類。ヨーロッパとアジアの中部に分布し,日本では本州四国,九州の平地から標高1200mまでに分布する。体長6cm,尾長7cm。体色は背側がオレンジ色,または黄褐色,腹側は白色から灰白色。尾は長く,物に巻きつけることができ,尾を支えにして茎を垂直に巧みに上り下りする。草地水辺アシなどの茂み,穀物畑などにすむ。5~12月には草の茎の間,地面から70~150cmの高さに,直径6~10cmの堅固な繁殖用の球形の巣とそれより小型の簡単な構造の休息用の巣をつくる。冬から春にかけては地上の積草の間や地下の空所に直径約4cmの簡単な巣をつくる。おもに夜活動し,イネ科植物などの種子,芽,昆虫などを食べる。雌は5~12月に2回以上,1産2~8子を生む。子は閉眼,無毛で生まれ,約15~16日で離乳する。この時期の子の体色は濃い灰褐色で,成獣とはっきり異なる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カヤネズミ」の意味・わかりやすい解説

カヤネズミ
かやねずみ / 萱鼠
harvest mouse
[学] Micromys minutus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。1属1種で、ヨーロッパ、シベリア、朝鮮半島、中国南部、アッサム、台湾、日本など分布が広い。日本では関東以西の本州、四国、九州、対馬(つしま)、隠岐(おき)諸島、淡路島にみられる。頭胴長約60ミリメートル、尾長約60ミリメートル。体重は8~10グラムでもっとも小形のネズミである。沼沢地、河床の草原、堤防水田など草丈の高いイネ科草本の繁茂する所にすんでいる。尾を巻き付けて、巧みに草に登り、初夏から秋にかけてススキの茎などに、葉や穂綿を利用して球形の巣をつくる。巣の直径は8~10センチメートル。冬は地中のトンネル内にすむ。草の種子のほか、イナゴバッタなどの小動物も食べる。出産期は地方によって異なるが、3月から12月に及ぶ。妊娠期間は21日ぐらいである。1産2~8子で、球巣の中で子を育てる。北アメリカに分布するアメリカカヤネズミ属Reithrodontomysはキヌゲネズミ科に属し、カヤネズミとの類縁はないが、生活様式に類似がみられる。

[宮尾嶽雄]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カヤネズミ」の意味・わかりやすい解説

カヤネズミ
Micromys minutus; harvest mouse

齧歯目ネズミ科。体長5~7cm,尾長5~9cm。体は淡黄褐色ないし淡赤褐色で,下面は白色。長い尾の先端部には毛がなく,物に巻きつけることができる。草を用いて小鳥のような巣をつくる。本州,四国,九州,ユーラシア大陸の平地から標高 1000mまでに分布し,ススキ,カヤツリグサなどイネ科植物が生えるところにすむ。長い尾は草の茎を登るのに役立つ。日本では北方より南方により多くみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のカヤネズミの言及

【ネズミ(鼠)】より

… 人間社会に半ば寄生して生活するドブネズミ(イラスト),クマネズミハツカネズミ(イラスト)の3種をふつうイエネズミ,他をノネズミという。
[形態]
 体は多くは小型で,体長が9~20cmのものが大半であるが,最小のものはトビネズミ科のバルチスタンコミミトビネズミSalpingotus michaelis(体長3.6~4.7cm,尾長7.2~9.4cm)で,日本産ではカヤネズミ(体長5.2~7.1cm,尾長5.2~9.1cm)である。最大種は,体長ではホソオフレオミスPhloeomys cumingi(体長28~48.5cm,尾長20~35cm,体重1.5~2kg),体重ではスマトラタケネズミRhizomys sumatrensis(体長48cm,尾長20cm,体重4kg),日本産ではケナガネズミ(体長28cm,尾長37cm,体重630g)。…

※「カヤネズミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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