カラッチ(Annibale Carracci)(読み)からっち(英語表記)Annibale Carracci

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カラッチ(Annibale Carracci)
からっち
Annibale Carracci
(1560―1609)

イタリアの画家、版画家。11月3日ボローニャの大聖堂で受洗、1609年7月15日ローマで没した。ロドビコの従兄弟(いとこ)、アゴスティーノの弟であるが、カラッチ一族のなかではもっとも傑出しており、イタリア・バロック絵画の開拓者の一人となった。年代の確かな最初の作品『磔刑(たっけい)』(1583・ボローニャ)や『キリストの洗礼』(1585・同)などの作品にすでに、彼の特質である生き生きとした色彩と自然主義的傾向が認められる。アカデミア・ディ・インカンミナーティの創設に参画する一方、アゴスティーノに協力してボローニャのファバ宮やマニャニ宮の壁画装飾に従事した。また、ダイナミックな構図と暖かな色調の祭壇画も数多く制作。1595年枢機卿(すうきけい)オドアルド・ファルネーゼの招きに応じてローマに赴き、ファルネーゼ宮のカメリーノに『ヘラクレスの物語』などの天井画を制作した(1595~97)。続いて委嘱されたガレリアの装飾は、アゴスティーノやドメニキーノなどの協力で完成されたが、17、18世紀にはミケランジェロラファエッロの壁画に次いで優れたものとして賞賛された。病気となった1605年以後は、ほとんど制作をしなかった。

[篠塚二三男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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