日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリプソ(歌)」の意味・わかりやすい解説
カリプソ(歌)
かりぷそ
calypso
西インド諸島のトリニダード島に発達した黒人の歌。その起源は西アフリカの労働歌にあるといわれる。歴史上の事件や日常のできごとをテーマにした歌詞をもち、ときには政治家や権力者を風刺して、ニュースを伝達する役割をも果たしていた。1920年代の末ごろから、同島の首府ポート・オブ・スペインでは、カーニバルの行事の一つに取り入れられ、カリプソ・テントの中で予選をパスしたカリプソニアン(カリプソ歌手)が即興で歌合戦を行い、優勝者には向こう1年間「キング・オブ・カリプソ」の称号が与えられた。第二次世界大戦中この島に基地を置いたアメリカ軍の将兵を通じてアメリカ合衆国に伝わり、44年『ラムとコカコーラ』がヒットした。さらに56年、ハリー・ベラフォンテがジャマイカの労働歌『デイ・オー』(バナナ・ボート・ソング)などをカリプソの名で発表して大成功を収め、リズム名として世界中に知れ渡った。
[永田文夫]