カルガモ(読み)かるがも(英語表記)spotbill duck

改訂新版 世界大百科事典 「カルガモ」の意味・わかりやすい解説

カルガモ (軽鴨)
spotbill duck
Anas poecilorhyncha

カモ目カモ科の鳥。インドおよび東南アジアから中国北部沿海州まで分布する。日本では全国で繁殖しているが,南日本に多い。留鳥だが,北日本のものは冬季は南へ移動する。全長約60cm。日本のカモ類の中ではマガモと並ぶ大型種である。羽色は全身黒褐色で淡色の波模様がある。白っぽい顔にある2本の黒褐色線と,三列風切羽の白斑,それに橙赤色の脚が目だち,黒いくちばしの先端が黄色いのが特徴。この種は他の多くのカモ類と異なり雄雌同色である。波静かな海上で見ることもあるが,湖沼河川,池,水田湿地など淡水で見ることが多く,都市の公園などでもよく見かける。4~7月に水辺の草むらやヨシ原の中の地上に巣をつくり,1腹8~12個の卵を産む。食物は草木類の種子水草の根や芽で,穀類もかなり食べる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルガモ」の意味・わかりやすい解説

カルガモ
かるがも / 軽鴨
spotbill duck
[学] Anas poecilorhyncha

鳥綱カモ目カモ科の鳥。日本のカモ類のうち低地で夏にみられるのは本種だけであるので「ナツガモ」の俗称もある。マガモに近い東洋産の種で、日本、中国のカルガモ、鼻に小赤瘤(りゅう)のあるビルマカルガモ、インド産で鼻に大赤瘤のあるアカボシカルガモの3亜種がある。

 日本では、北部のものは冬は南に移動するが、本州中部では留鳥で水田や葦原(あしはら)などで繁殖し、秋にはイネを食害したりする。都市の公園や堀などにも飛来して越冬し、繁殖するものもある。全長約60センチメートル。黒褐色であるが羽縁は淡色で、三列風切(かざきり)外縁は白い。翼鏡には白帯がなく、飛ぶと翼下面の白色が目だつ。雌雄同色でマガモの雌に似た羽斑(はん)であるが、赤褐色みはなく暗色なのでクロガモの地方名もある。習性や声もマガモとほとんど同じで、近縁であるがその雑種は不妊性である。

 近縁で小形のマミジロカルガモA. supercilliosusのグループは、太平洋諸島からオーストラリアに、本種にかわって分布する。

[黒田長久]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルガモ」の意味・わかりやすい解説

カルガモ
Anas zonorhyncha; eastern spot-billed duck

カモ目カモ科。全長 53~63cm。雌雄同色で全身褐色,顔部は淡褐色で,2本の黒線がある。の下雨覆は白く,飛ぶとよく目立つ。は黒く,先端が黄色。脚は橙赤色。湿地,湖沼,河原などで繁殖し,ときに水辺からかなり離れたところに巣をつくることもある。マガモと近縁で,マガモや家禽のアイガモなどと自然交配し,雑種をつくることがある。北東アジアに広く繁殖分布し,北部のものは中国南部や台湾,フィリピンなどに渡って越冬する渡り鳥だが,温帯域の多くでは一年中同じ地域に暮らす留鳥である。(→ガンカモ類

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百科事典マイペディア 「カルガモ」の意味・わかりやすい解説

カルガモ

カモ科の鳥。翼長27cm。他のカモ類と違ってほとんど雌雄同色で,体は暗褐色で胸は黄褐色と暗褐色の斑。日本全土,東南アジア,中国等に分布し,沼沢地や水辺の草中に営巣する。北日本では夏鳥。近年,都市の公園の池などでも繁殖するようになった。

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