カレハガ(読み)かれはが

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カレハガ」の意味・わかりやすい解説

カレハガ
かれはが / 枯葉蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目カレハガ科Lasiocampidaeの総称、またはそのなかの1種。この科のガ類は大形で、枯れ葉に似た翅形や色彩のものが多いため、名はそれに由来する。幼虫森林果樹庭木などに寄生する毛虫で、害虫として重要視されるものが少なくない。また、毒針毛をもち、蛹化(ようか)の際は繭にこれをつけるので皮膚炎の原因となり、衛生昆虫として注目される種もある。ほとんど全世界に分布し、熱帯地方に種類が多いが、寒冷地に適応し、高山帯に生息している種もある。日本には20種が分布しており、害虫として重要なものに、樹木につくマツカレハツガカレハ、クヌギカレハ、オビカレハリンゴカレハのほか、ササヨシなどイネ科につくものはタケカレハ、ヨシカレハなどである。

 和名カレハガGastropacha orientalisは、この科のなかでもっとも枯れ葉に似ている属に含まれる。この属は日本に4種を産し、そのうち北海道を除く各地にもっとも普通にみられるのがカレハガである。本種は、はねの開張は雄50ミリメートル内外、雌60ミリメートル内外で、外縁は鋸歯(きょし)状で後翅の前縁は出っ張っている。静止の際は、はねを屋根形に畳む。夜行性で、灯火飛来する。日本のほか、朝鮮半島からシベリア南東部に分布する。幼虫はモモ、ウメ、サクラ、ナシ、スモモヤナギなど多くの樹木の葉を食べる。体長80ミリメートル内外で、灰褐色の地に黒点を散在し、ところどころに黒紋があり、樹皮に静止しているときは背景と区別しにくいほどよく似ている。幼虫態で越冬し、晩春に老熟して樹幹などに繭をつくる。繭には幼虫の刺毛がつけられ、内側は蛹(さなぎ)とともに白粉にまみれている。第1回目の成虫は初夏に、第2回目の成虫は晩夏に出現する。本種によく似たヒロバカレハG. quercifoliaは、はねの幅が広い。この種はヨーロッパから日本まで分布するが、日本では東北地方と中部地方の山地にしか産しない。なお、この種の学名を、かつてはカレハガに誤用していた。

[井上 寛]


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改訂新版 世界大百科事典 「カレハガ」の意味・わかりやすい解説

カレハガ (枯葉蛾)
Gastropacha orientalis

鱗翅目カレハガ科の昆虫。成虫が枯葉のような色をしたかなり大型のガで,翅を屋根形にたたんで静止している姿も枯葉によく似ている。開張は雄4cm内外,雌7cm内外。幼虫は大型の毛虫で,刺毛をもち,老熟して樹幹などに付着して繭をつくるときはこの刺毛をつける。モモ,ウメ,サクラ,ナシ,リンゴなど多くの植物に寄生する。ほとんど日本全国と朝鮮半島,シベリア南東部に分布し,成虫はよく灯火に飛来する。

 カレハガ科Lasiocampidaeは,中型から大型のガで,ほとんど全世界に分布し,ことに熱帯に種が多い。日本には20種産し,幼虫が庭木や森林の害虫とされているもの,毒針毛によって皮膚に疼痛(とうつう)を与えるものなど,人間と直接関係の深い種が少なくない。一般に成虫の腹部は太くて長く,ことに雌は体が太く重いため飛翔(ひしよう)力が弱く,産卵前に灯火に飛んでくることはごくまれである。雌は羽化後にあまり活動せず,樹幹などに静止して交尾のため雄の飛来を待つ。
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百科事典マイペディア 「カレハガ」の意味・わかりやすい解説

カレハガ

鱗翅(りんし)目カレハガ科の1種。開張75mm内外,濃赤褐色。日本全土,朝鮮,中国からシベリアを経てヨーロッパまで広く分布。幼虫はウメ,サクラなどの葉を食べ,成虫は年2回,6〜7月と8〜9月に現れ,よく灯火にくる。幼虫には農業・林業・園芸上の害虫も少なくない。マツカレハ,オビカレハ,リンゴカレハなどはその代表種。

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