カレン

化学辞典 第2版 「カレン」の解説

カレン
カレン
carene

C10H16(136.24).二環性モノテルペン.ヒマラヤマツPinus longifolia精油に含まれている(+)-Δ3-カレンまたは(1S,6R)-3-カレン,ショウガ科のバンウコンKaempferia galangaに含まれている(-)-Δ3-カレンまたは(1R,6S)-3-カレンと,イネ科Andropogon jawarancusaに含まれている(+)-Δ2-カレンまたは(1S,6R)-2-カレンが知られている.Δ2-カレンは以前に Δ4-カレンといわれていたものと同一物質.(+)-Δ3-カレンは,沸点123~124 ℃(26.7 kPa).+7.69°.0.8668.1.4678.(+)-Δ2-カレンは,沸点166~167 ℃(94 kPa).+62.2°.0.8552.[CAS 20296-50-8:(-)-Δ3-カレン][CAS 13466-78-9:(±)-Δ3-カレン]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カレン」の意味・わかりやすい解説

カレン
かれん
Karen

ミャンマービルマ)とタイとの国境にまたがり、シャン高原南部からテナセリム山脈にかけて分布する民族。人口は、推定によると、ミャンマー側で300万以上、タイ側で10万~15万とされる。言語はシナ・チベット語族カレン語派に属するが、モン・クメール系の要素も指摘され、系統上の位置づけは定まっていない。

 18世紀なかばから一部が下ビルマ地方のデルタ地帯に進出し、低地カレンとよばれて水稲耕作を基本とした生活を営んでいる。一方、焼畑耕作を生業とする伝統的な生活が山地カレンの間にみられる。家屋は高床長屋式で、独身男性用の部屋がある。村落が基本的単位である。親族制度は双系的であるが、妻方居住が普通で、ブガとよばれる祖霊への儀礼は母系親族が集まって行う。彼らの間で貴重とされる銅鼓は、村落生活でのさまざまな合図に用いられる。低地カレンを中心に仏教が浸透しているが、19世紀以降にキリスト教が広まり、人口の約15%が信者である。

 カレンは方言によっていくつかのグループに分けられる。そのなかの大きなグループはポー・カレンとスゴー・カレンで、低地カレンは両者いずれかである。このほかに、山地では少人数のカレン系集団が数多くみられる。このなかには、金属製の輪を何重にもはめて女性の首を長くするという特異な風習をもつパダウン人や、シャン文化の影響を強く受け、土侯国の制度をもったカヤー(赤カレン)人などがある。

 カレンはビルマ独立の際に、ビルマ軍と大規模な軍事衝突(1949)をし、カレン民族防衛組織(KNDO)は一時、臨時政府を樹立した。この「反乱」の理由の一つとしてイギリス領時代の分離統治政策があげられる。カレン人の勤勉でおとなしいといわれる民族性もあって、植民地下ではカレン人のほうがビルマ人より優遇された地位を占めていた。それが両民族間の利害の対立や反目を増大させることになったといわれる。今日なお一部のカレン人は、カレン州辺境部でミャンマーの現政権に反旗を翻している。

[田村克己]

『飯島茂著『祖霊(ブガ)の世界』(NHKブックス)』

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改訂新版 世界大百科事典 「カレン」の意味・わかりやすい解説

カレン[州]
Karen

ミャンマー連邦社会主義共和国に含まれる七つの州の一つ。面積2万8700km2。人口149万(2000)。1951年に設置された。行政的には8郡に細分される。州都はパアン。ミャンマー南東部,カヤー州の南に位置し,タイ国境に沿って北西から南東に幅110km,長さ520kmにわたって細長く延びた山岳地から成る。東部国境沿いに山地が縦走しているため,南西季節風の影響を直接こうむり,降雨量も平均年3000~4000mmと多い。チークその他の林産資源は豊富であるが,平地が少ないため水田面積は1900km2とミャンマーの総水田面積のわずか3.6%を占めるにすぎない。住民の7割までは焼畑耕作に従事している。主要住民はカレン族で,言語によってスゴー,ポー,パグー,パオ,ブエ,パラチーなどの亜族に分かれる。ビルマ(現,ミャンマー)独立の際,カレン国の分離独立を主張する過激派が,カレン民族防衛組織を結成して武装蜂起したが,その後身は今でもタイ国境で活動している。
執筆者:

カレン
William Cullen
生没年:1710-90

イギリスの医師。スコットランドハミルトンに生まれ,グラスゴー大学で医学を修め,船医や薬局助手を経験した後,故郷で開業した。1740年グラスゴーで学位を得て,51年からグラスゴーの内科学教授となった。55年エジンバラ大学化学教授に迎えられ,57年から臨床講義を開始。ラテン語を使わず英語でなされた明快な講義は,的確な診断と相まって学生を雲集せしめ,エジンバラ学派臨床医学の中心地とした。主著は《疾病分類論》(1769)と《実地医学綱要》(1776-84)。神経力の高下により身体実質部の張力が変動し,過度の緊張あるいは無力状態になると諸種の病気が起こると説き,鎮静剤と緊張剤の使用を推奨した。疾病分類の中に〈神経症〉を記載した。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「カレン」の意味・わかりやすい解説

カレン

ミャンマーのシャン州南部,カヤ,カレン両州,テナッセリム地方およびそれと境を接するタイ領に分布する人びと。人口100万人以上で,カレン語を使用。キリスト教徒が多いが一部は仏教徒。焼畑による稲作を行うが,人工灌漑(かんがい)もところにより存在する。1948年のミャンマー独立に際し,英国の援助でカレン地帯の分離独立を要求してビルマ人と交戦。以来カレン州を拠点に反政府闘争が続いた。
→関連項目カレン民族同盟ミャンマー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カレン」の意味・わかりやすい解説

カレン
Cullen, William

[生]1710.4.15.
[没]1790.2.5.
イギリスの医師。理髪外科医の徒弟となり,ハミルトンの町医者となった。 W.ハンターと親交を結んでから,医学の研究を志し,1746年エディンバラ大学を卒業,51年グラスゴー大学教授となり,次いでエディンバラ大学に転じて,化学,理論医学,実地医学を講じた。 F.ホフマンの医学説,A.ハラーの刺激感応性説をヒントに,身体の正常な状態は神経系から出される神経エネルギーによって定まる,つまり,あらゆる生命現象は神経の働きの表われであると考え,神経があらゆる疾病現象に関係するとする神経病理説を唱えた。イギリスにおける臨床講義,自国語による講義の実践者としても有名である。弟子にブラウン説を唱えた J.ブラウンがいる。

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デジタル大辞泉プラス 「カレン」の解説

カレン〔筆記具:ぺんてる〕

ぺんてる株式会社の多色ボールペンの商品名。従来の多色ボールペンより細く携帯しやすい。2~4色用がある。

カレン〔自動車〕

トヨタ自動車が1994年から1998年まで製造、販売していた乗用車。2ドアクーペ。セリカの姉妹車。

カレン〔ドラマ〕

アメリカ制作のテレビドラマ。原題は《Karen》。放映はNBC局(1964~1965年)。

カレン〔筆記具:ウォーターマン〕

フランスの筆記具ブランド、ウォーターマンの筆記具。万年筆とボールペンがある。

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世界大百科事典(旧版)内のカレンの言及

【カルスト地形】より

… 石灰岩の露頭には,雨水や地表流による溶食作用によってさまざまの微地形が刻まれる。溝状の微地形をドイツ語でカレンKarren,フランス語でラピエlapiésといい,このカレンの景観が広く見られる原野を,ドイツ語でカレンフェルトKarrenfeldという。もっとも普通に見られるものは,条溝型カレンや水溝型カレンと名づけられるもので,ある程度傾斜した石灰岩の表面に,平行に並ぶ浅い溶食条溝が刻まれ,さらにそれが深い溶食水溝に発達する。…

【神経症】より

…神経症とは,精神的または身体的な強い自覚症状をもつが,身体的原因を欠き,その原因が心理機制によって説明される機能的疾患である。神経症という語は1777年にスコットランドの医師W.カレンにより最初に用いられた。当時の概念は現在のそれと異なり,病因不明であった雑多な精神神経疾患の総称であった。…

※「カレン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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