カワシンジュガイ(読み)かわしんじゅがい(英語表記)freshwater pearl mussel

改訂新版 世界大百科事典 「カワシンジュガイ」の意味・わかりやすい解説

カワシンジュガイ (川真珠貝)
Margaritifera laevis

山間清流にすむカワシンジュガイ科の二枚貝。ときどき殻内に真珠をもつのでこの名がある。殻の長さ11.5cm,高さ5cm,膨らみ3.3cm。やや厚く,長卵形で膨らみは弱く,下側の縁は緩く中央部がややくぼむ。表面は幼貝では平滑で黄褐色であるが,成長すると黒色になり,殻頂のところは皮がとれて白くなっている。内面は強い真珠光沢がある。グロキジウム幼生は内外2枚のえらにある保育囊の中で育てられ,次にサケ・マス類の魚のえら,ひれ,体表などにかぎで付着し,栄養を吸い取って成長してから,魚を離れて水底に落ちて幼貝になる。北極をめぐる地方に分布し,氷期には分布が南下した。日本では北海道および本州の東北地方の水温の低い山間の清流にすむが,南限は山口県小瀬川に及んでいる。各地で河川のダムや改修工事,汚水流入で減少し,東北地方以南では絶滅に瀕(ひん)しているところが多い。貝塚には食用にした殻があり,また貝殻は包丁に使われた。アイヌ民話では,この貝(アイヌ語ではピパなどと呼ばれた)は雷神つめが化けたもので,熊は雑食であるが,神のたたりを恐れてこの貝だけは食べないという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワシンジュガイ」の意味・わかりやすい解説

カワシンジュガイ
かわしんじゅがい / 川真珠貝
freshwater pearl mussel
[学] Margaritifera laevis

軟体動物門二枚貝綱カワシンジュガイ科の二枚貝。淡水産の種で、北海道および本州にすむが、本州では日本海側に分布し、南(西)限は山口県。シベリアにも分布する。殻長12センチメートル。殻高5センチメートル。殻は長卵形で厚質、腹縁は直線的であるが、中央がややへこむ。殻頂は前方に寄る。内面は真珠光沢が強い。山間の清い渓流で小石の間に殻の前半を埋め、後半を斜めに突き出しているさまからタチガイ(立貝)の俗称がある。この貝のグロキディウム幼生はヤマメやイワナなどのサケ科魚類のえらに付着する。すこし前までは日本の種とユーラシアの種は同一とされていたが、最近の研究で別種であることが明らかとなった。成長が遅く年に数ミリメートルしか大きくならないと思われ、老成貝は100歳とも200歳ともいわれ、貝類のなかでは長寿種である。昔、アイヌ民族はこの貝をナイフの代用にしたといわれる。

[奥谷喬司]

 2022年(令和4)、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)で特定第二種国内希少野生動植物種に指定され、販売や頒布を目的とした捕獲や譲渡などは原則禁止されている。

[編集部 2023年4月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カワシンジュガイ」の意味・わかりやすい解説

カワシンジュガイ
Margaritifera laevis; freshwater pearl mussel

軟体動物門二枚貝綱カワシンジュガイ科。淡水産。ヨーロッパでは古くからこの類から真珠をとっていたのでその名がある。また,水温の低い清流にすみ,砂礫底に殻の後半を斜めに立てて群生するのでタチガイの名もある。殻長 12cm,殻高 5cm,殻幅 3.5cm。殻は長卵形で腹方へ少し曲り,殻頂は前方に寄り,低い。殻表は成長すると黄褐色から黒色になる。殻内面は強い真珠光沢がある。成長が遅く,100年以上も生きるといわれる。北海道から本州山口県までと,アムール,ウースリー,サハリンなどに分布している。またグロキジウム幼生はヤマメやイワナなどの鰓 (あぎと) に付着している。近年,河川の汚染により,南日本では急激に減少し,絶滅に瀕している。

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