カワハギ(読み)かわはぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワハギ」の意味・わかりやすい解説

カワハギ
かわはぎ / 皮剥
[学] Stephanolepis cirrhifer

硬骨魚綱フグ目カワハギ科に属する海水魚。関西地方ではハゲとよぶ。北海道以南の日本各地と東シナ海分布する。体は菱(ひし)形で強く側扁(そくへん)する。腹びれ後端の突起は上下に動かすことができる。背びれの棘(とげ)は目の後方上に位置する。雄では背びれの第2軟条が糸状に延長し、尾柄部の側方に短い剛毛がある。体の全面が絨毛(じゅうもう)状の鱗(うろこ)に覆われる。体長は25センチメートルに達する。体の地色は淡褐色で多数の細い黒色縦斑(じゅうはん)が散在する。尾びれは暗褐色で、ほかのひれは黄色。料理する際に容易に皮がはげるのでこの名がついた。なお、カワハギという名は、カワハギ科の総称としても使用される。産卵期は6~8月で、卵は球形の沈性粘着卵。1尾の抱卵数は全長24センチメートルの魚で約15万粒。稚魚のときはホンダワラなどの流れ藻の下に多数集まり、甲殻類の幼生などを食べる。5センチメートル以上に成長すると8~30メートルの深みへ移動する。成魚は小さな群れをつくり、磯(いそ)の周囲に生息する。同じ水槽の中にカワハギを入れると、個体間に優劣関係が生じて体色などに現れる。もっとも劣位の個体では体色は白っぽくなり、背びれと腹びれの棘が倒れ、尾びれも閉じている。優位の魚になると体の黒色斑が鮮明になり、背びれと腹びれの棘も立ち、尾びれも開く。優位の程度が高くなるほどこの傾向は明瞭(めいりょう)となる。優位な魚でも驚いた場合には劣位の魚と同様の状態になる。

[松浦啓一]

釣り

船釣りがおもである。真夏を除いて、ほぼ一年中釣れるが、とくに冬はやや深みに集まるので釣趣もある。竿(さお)は2メートル前後で、竿先の敏感な先調子。この先がセミクジラひげでつくられているものは最適である。道糸は伸びのないポリエステル糸で3~4号。片軸受型ハイスピードリールか中型両軸受リール。仕掛けは餌(えさ)取り上手のカワハギに備えてハリス2号か3号を5~10センチメートルにして枝鉤(えだばり)式二本鉤。餌はアサリのむき身が最高。釣り方のこつは、オモリを一気に底につけたら、道糸をたるませずに、竿先ですうっと誘い上げる。竿先から目を離さず、魚信ですばやくリールを巻く。この魚信で竿を下げたり、道糸をたるませてしまうと鉤掛かりしにくい。

[松田年雄]

料理

カワハギは皮をむいてから調理する。カワハギの名もここからきたものである。皮は口先から尾のほうへ引っ張るようにして一気にむく。肝臓が大きく、この部分には滑らかで濃厚な口あたりがある。煮つけ、ちり鍋などに用いる。てんぷら、刺身(さしみ)、みそ汁の実などにもよい。

[河野友美]


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改訂新版 世界大百科事典 「カワハギ」の意味・わかりやすい解説

カワハギ (皮剝)
file fish
Stephanolepis cirrhifer

フグ目カワハギ科の海産魚。本州中部以南,南方水域に広く分布する。体は著しく側扁し,突出した吻(ふん)の先端に小さな口がある。皮膚はかたく,うろこは小さくて微小なとげがあるため体の表面は絨毛(じゆうもう)状を呈する。瀬戸内地方でハゲ,福岡でカワムキなどの地方名も,標準和名のカワハギも,かたい皮をはいで食膳に供するところからつけられたものである。第1背びれと腹びれは退化していずれも1本の棘(きよく)だけになっている。体は黄灰色の地に黒褐色の不規則な斑紋が散在しているが,仲間どうしの闘争で勝者は体全体の黒みが増し,敗者は淡色となる。ひれは黄色で,雄魚では第2背びれの第2軟条が糸状にのびている。産卵期は6~8月で,稚魚は藻場に群れたり,流れ藻について泳いでいる。成長につれて岩場に移るが,遊泳力は弱く,垂直びれを波状に動かして前進あるいは後退する。全長は25cmに達する。甲殻類,貝類,ゴカイなどを捕食する。釣りにかかっても上下両あごのかたい歯で糸を食いちぎって逃げることが多いので,釣師から〈餌とりの名人〉といわれる。刺身,煮魚,ちりなべなどとして賞味され,肝臓も珍重される。近縁種のウマヅラハギNavodon modestusはカワハギよりやや沖合にすむ。全長30~40cm。馬面の名のように顔が長い。
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百科事典マイペディア 「カワハギ」の意味・わかりやすい解説

カワハギ

カワハギ科の魚。地方名ハゲ,スブタ,メンボウなど。全長25cm。腹びれは退化してただ1本のとげになっている。雄では背びれの第2軟条は糸状にのびることが多い。皮膚は堅い。本州中部〜東シナ海に分布。美味で,ちり料理は特に喜ばれる。近縁にウマヅラハギがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カワハギ」の意味・わかりやすい解説

カワハギ
Stephanolepis cirrhifer

フグ目カワハギ科の海水魚。皮をはいで食用にするため,その名がある。全長 30cm。体は側扁し,菱形で,灰色の地に暗色斑点がある。雄の背鰭の前部軟条が糸状に伸びる。北海道以南,東シナ海に分布する。

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栄養・生化学辞典 「カワハギ」の解説

カワハギ

 [Stephanolepis cirrhifer].フグ目カワハギ科の海産魚.全長25cmになる.食用にする.

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