カワモズク(英語表記)Batrachospermum

改訂新版 世界大百科事典 「カワモズク」の意味・わかりやすい解説

カワモズク
Batrachospermum

世界各地の湧泉からの小川や灌漑用水路などの流水中にみられるカエルの卵塊のようなカワモズク科の淡水産の紅藻。体は節をもつ中軸と,節から出る輪生枝とからなり,それらの周囲には多量の寒天物質が分泌されるので,体は寒天質の数珠(じゆず)の形状となる。カワモズク属には種類数が多く,種の同定は容易でない。分類には,輪生枝の発達の程度,囊果(のうか)の位置,受精毛の形,雌雄異株か同株かなどが主な形質となる。代表的な種に,カワモズクB.moniliforme Roth,アオカワモズクB.virgatum SirodotおよびヒメカワモズクB.gallaei Sirodotなどがある。三杯酢などであえて食用にすることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワモズク」の意味・わかりやすい解説

カワモズク
かわもずく
[学] Batrachospermum moniliforme Roth

紅藻植物、カワモズク科の淡水藻。きわめて柔らかい粘滑質の糸状分岐体で、体長は10センチメートル以内。一般に体色は灰紅色である。緑紅色になるなどの変化も多く、種名同定はむずかしいが、小球がつながる数珠(じゅず)のような体枝をもち、ときには、その数珠球の中に小粒の嚢果(のうか)が肉眼でもみられるのが特徴である。冬季から初夏にかけて繁茂する一年生藻。諸地方の河川湖水泉水などと分布域は広いが、生育量が少ないのでみつけにくい。外形のよく似たものに、数種の同属異種があるほか、属の違うユタカカワモズクSirodotiaオキチモズクNemalionopsisなどがある。後者の藻は日本では稀産(きさん)で、九州や四国の一部に産するだけであり、長崎・愛媛県下のオキチモズクN. tortuosaは国の天然記念物である。

[新崎盛敏]

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