カワラケツメイ(読み)かわらけつめい

改訂新版 世界大百科事典 「カワラケツメイ」の意味・わかりやすい解説

カワラケツメイ (河原決明)
Cassia mimosoides L.ssp.nomame(Sieb.)Ohashi

河原,土手,道ばたなど日当りのよい草地に生えるマメ科一年草。茎は高さ30~60cm。葉は長さ3~7cm,多数の偶数個の小葉がつき,葉柄の上側に1個の蜜腺がある。小葉は小型で線形または狭卵形,長さ約1cm,幅2~3mm。夏に咲く花はマメ科にふつうの蝶形花ではなく,バラ科の花に似ている。花弁は黄色,ほぼ同形の5枚で,倒卵形,長さ6~7mm。萼片は5枚,離生しており,狭卵形で長さ5~6mm。おしべは4~5本で離生する。果実は扁平な長方形,長さ3~4cm,幅5~6mm,中にふつう10個の種子がある。本州,四国,九州,朝鮮,中国に分布。和名は河原に生える決明の類の意味。決明は同属の有用植物で,よく栽培されているハブソウまたはエビスグサの漢名。葉や果実を茶の代用とし,また民間では利尿薬ともする。このためマメチャ(豆茶),あるいは葉がネムに似て多数の小葉からなるためネムチャの別名もある。

 沖縄には世界の熱帯,亜熱帯に広く分布するリュウキュウカワラケツメイssp.mimosoidesが生育する。果実はカワラケツメイよりも細長く,長さ4~5cm,幅4~5mmあり,ふつう15~16個の種子を入れる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワラケツメイ」の意味・わかりやすい解説

カワラケツメイ
かわらけつめい / 河原決明
[学] Chamaecrista nomame (Makino) H.Ohashi

マメ科(APG分類:マメ科)の一年草であるが、まれに多年生のものもある。茎は高さ20~60センチメートル。葉は長さ3~7センチメートルの偶数羽状複葉で、小葉は15~35対、葉柄は短く上部に杯(さかずき)状の蜜腺(みつせん)がある。8~10月、葉腋(ようえき)よりやや上方から出た短柄に1、2個の花をつける。花は黄色で径約1センチメートル、萼(がく)は5全裂し萼片は先が鋭くとがる。5枚の花弁はほぼ同形で倒卵形、斜めに開き、雄しべは4、5本であるが、退化雄蕊(ゆうずい)があるものもある。豆果は8~12個の種子を含み、広線形で長さ3~4センチメートル、伏した短毛があり、裂開して種子を飛ばす。本州、四国、九州の河原、道端などに生え、朝鮮半島、中国にも分布する。ねむ茶、まめ茶と称し、全草を干すか、種子を炒(い)って茶の代用とする。これには利尿効果がある。名は、漢方薬の決明(けつめい)(エビスグサ)の類で、河原に多く生えることによる。

[立石庸一 2019年10月18日]


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百科事典マイペディア 「カワラケツメイ」の意味・わかりやすい解説

カワラケツメイ

本州〜九州,東アジアの川原などの日当りのよい草地にはえるマメ科の一年草。茎は高さ50cm内外となり,葉は30〜70枚の広線形の小葉からなる羽状複葉。夏〜秋,葉腋に黄色,径6〜7mmの5弁花を1〜2個つけ,後に平らで広線形の豆果を結ぶ。薬用,茶の代用となる。名は川原の決明(エビスグサ)の意。
→関連項目浜茶

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世界大百科事典(旧版)内のカワラケツメイの言及

【エビスグサ】より

…種子は漢方の望江南子(ぼうこうなんじ)で,エビスグサの種子と同様に利用される。 エビスグサが所属するカワラケツメイ属Cassiaは,熱帯を中心に約450種ほどを有するマメ科の大きな属で,薬用として有名なセンナをはじめ,ホソバセンナC.angustifolia Vahl.,ナンバンサイカチC.fistula L.,それにC.nodosa L.などの薬用植物を含むし,美しい花をつける種も多く,熱帯の公園や花壇にいくつかの種が栽植されている。高級木材として家具や細工,建築に利用されるタガヤサンも東南アジア大陸部に分布する本属の植物である。…

※「カワラケツメイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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