ガイセリック(読み)がいせりっく(英語表記)Geiseric

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガイセリック」の意味・わかりやすい解説

ガイセリック
がいせりっく
Geiseric
(389?―477)

バンダル人の王(在位428?~477)。409年以降スペインに定住したバンダル人は、その後西ゴート人から圧迫されたため、429年彼は全バンダル人を率いてアフリカに渡り、439年カルタゴ市を占領してバンダル王国を建てた。442年バンダル貴族の反乱を鎮圧して、専制的権力確立、カルタゴから継承した海軍力を背景に、西地中海の制海権を握り、コルシカ、サルデーニャシチリアを占領したほか、455年にはローマ市略奪を行った。またアリウス派立場から、カトリック司教や大土地所有者を圧迫したので、ローマ系住民の反感を買い、彼の死後王国は急速に衰退した。

[平城照介]

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百科事典マイペディア 「ガイセリック」の意味・わかりやすい解説

ガイセリック

ゲイセリクスとも。バンダル王(在位428年―477年)。民族大移動の際バンダル族を率いてイベリア半島から北アフリカに渡り,カルタゴを中心にバンダル王国を建設。シチリアなど西地中海の島々征服,ローマ市を略奪,ギリシア方面を荒らしてビザンティン帝国を圧迫した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ガイセリック」の解説

ガイセリック
Geisericus[ラテン],Gaiseric[英]

390頃~477(在位428~477)

ヴァンダルの王。429年イベリア半島から北アフリカに渡って,ローマ帝国領アフリカを征服した。地中海諸島,イタリア沿岸,ローマをも劫掠,さらにギリシア,ダルマツィアを荒らして東ローマ帝国を脅かした。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ガイセリック」の解説

ガイセリック
Geisericus

390ごろ〜477
ヴァンダル王国初代の王(在位428〜477)
故地であるオーデル川上流(現チェコ)からヴァンダルの全部族8万人を率いて429年イベリア半島をへて,北アフリカに侵入。439年ローマ軍を破り,カルタゴを王都としてヴァンダル王国を建て,455年ローマを攻略し,一時,地中海の覇者となった。

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世界大百科事典(旧版)内のガイセリックの言及

【バンダル王国】より

…しかし実際には部族としてのまとまりは弱く,ローマ領アフリカの社会を変革する力をもつものでもなく,むしろこの王国は既存の体制を利用して急速に浮上した専制的支配者の国家,つまりローマ帝国そのものの分身にほかならなかった。 王国の実質的な建設者として重要な役割を果たしたのはガイセリックGeiseric王(?‐477。在位428‐477)であるが,429年に彼に従ってジブラルタル海峡を渡った部族民集団は,北ドイツやハンガリー地方からの長い移動の途次逐次合流した多様な部族民によって構成され,軍事指導者としてのガイセリック個人への帰服者の集団へと変質していた。…

※「ガイセリック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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