キクラゲ

食の医学館 「キクラゲ」の解説

キクラゲ

《栄養と働き》


 ミミキノコ、キノミミとも呼ばれ、その名のとおり耳の形に似た姿形をしています。春から秋にかけてブナやカエデ、ニレなどの広葉樹の倒木や切り株に生え、温帯地域に広く分布しています。
 中国料理には欠かせない食材の1つで、一般的には乾燥品が出回っています。
 黒と白の二種類があり、白キクラゲは高級種として知られています。黒キクラゲはあらげキクラゲとも呼ばれます。中国では昔から不老長寿の妙薬として珍重されています。
〈コレステロール低下作用が高く、便秘・動脈硬化に効果大〉
○栄養成分としての働き
 キクラゲはビタミンB群、Eを多く含み、疲労回復、老化防止に有効です。ブドウ糖や果糖などが多数つながってできた物質であるマンニトールトレハロースといった糖質を約60%含んでいるので、抗ウイルス作用も期待できます。
 カルシウムや鉄、マグネシウムなどのミネラル類も豊富、体内でビタミンDにかわるエルゴステリンを多く含み、カルシウムの吸収を促進、骨を強化し骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を予防します。
 キノコ類のなかでもコレステロール低下作用が高く、乾燥品の場合、食物繊維がずば抜けて多いのが特徴です。そのため、少量でも便秘(べんぴ)改善や大腸がん予防に有効。腸管からのコレステロールの吸収を抑えて動脈硬化を改善する効果もあります。
 そして注目したいのがヌルヌル成分。キクラゲの独特のヌメリは膠質(にかわしつ)で、これには滋養強壮、乾燥肌予防、老化防止作用があります。この効果は白キクラゲのほうが強いといわれています。
 白キクラゲには抗酸化性もあるので、過酸化脂質の増加を抑え、動脈硬化、老化防止により一層、強力な働きをしてくれます。また、肺を潤し、せきを止める働きもあるので、カラせきがでるとき、老人性のぜんそくなどに有効です。
〈黒キクラゲは血小板凝集を抑え、血をサラサラに〉
 栄養成分的には、黒キクラゲのほうが鉄分が豊富です。黒キクラゲは動脈硬化、高血圧、心臓疾患、婦人科系の疾患の改善に役立つといわれています。少量でも血小板凝集(けっしょうばんぎょうしゅう)を抑える働きが強いので、毎日少しずつでも食べていれば、血液をサラサラにしてくれます。

《調理のポイント》


 乾燥品は肉厚で、かたくしっかり乾燥しているものを選びます。細かく砕けたものや肉が薄いものは質がよくありません。
 調理するときは、水かぬるま湯でもどし、石突きを取り除いてから使います。水でもどすと約10倍にふえるので、使う量を考えてもどしましょう。
 もどしたキクラゲは、酢のもの、和えもの、炒(いた)めもの、スープなどに利用します。コリコリとした歯ごたえが魅力で、キュウリハクサイセロリモヤシなどと組み合わせて炒めるとおいしく食べられます。
 白キクラゲはもどしたあと、さらに熱湯にくぐらせてから、シロップ漬けなどにして常備しておくといいでしょう。

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改訂新版 世界大百科事典 「キクラゲ」の意味・わかりやすい解説

キクラゲ (木耳)
Auricularia auricula(Hook.)Underwood

担子菌類キクラゲ科のキノコ。形が耳に似るところからJew's earとも呼ばれる。かさは耳状,径3~6cm,厚さ2~5mm,にかわ質で湿ればこんにゃくのように柔らかく,乾くと軟骨のように堅くなる。背面は暗褐色~黒褐色で微細な毛がある。下面はやや淡色。担子柄は円筒形で,横隔膜によって4細胞に仕切られる。胞子は腎臓形で大きさは11~15×4~7μm。広く世界に分布し,日本では春から秋にかけて広葉樹の枯幹・切株などに群生する。舌ざわりが柔らかく味は淡泊で,中国料理には欠かせないものである。また,日本料理にも適する。近縁種のアラゲキクラゲA.polytricha(Mont.)Sacc.は南方系の種で,食品としては劣る。
執筆者: キクラゲと名まえがつき,色が違うが外見は似るものにシロキクラゲアカキクラゲ,ヒメキクラゲなどがある。これらは分類学的には別物で,胞子の形によって区別される。シロキクラゲTremella fuciformis Berk.は初夏~秋のころ,林内の枯木や倒木,シイタケ栽培用の榾木(ほだぎ)などの上にみかける担子菌類シロキクラゲ目シロキクラゲ科のキノコ。不規則に湾曲し,純白で半透明のゼリー質で,全体は八重咲きの花のようにみえる。暖地性の菌で,関東以南,とくに四国,九州南部に多く自生する。中国や台湾などでは栽培され,不老長生の食品として中国料理に使われている。ヒメキクラゲExidia glandulosa Fr.も担子菌類シロキクラゲ目のキノコだが,食用とはされない。春から秋にかけて林の中の枯枝の上に平たく広がり,直径10cm以上にもなり,全体は青黒色で黒光りしている。表面に胞子を一面に作るので,白い粉をふいたようになる。アカキクラゲDacrymyces aurantius(Schw.)Farlowは担子菌類菌蕈(きんじん)綱キクラゲ科のキノコ。日本全土,北アメリカに広く分布し,針葉樹上の倒木や落枝に多く,普通は群生する。カロチノイド色素を含み,色は鮮やかな橙黄色~赤黄色。胞子ははじめ1細胞であるが,成熟すると7個の仕切りができる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクラゲ」の意味・わかりやすい解説

キクラゲ
きくらげ / 木耳
[学] Auricularia auricula (Hook.) Underw.

担子菌類、キクラゲ目キクラゲ科の食用キノコ。全体は耳形または波形に屈曲した皿ないし椀(わん)を伏せたような形になる、こんにゃく質のキノコ。径3~5センチメートル。多数群生し、互いに癒着して不規則な集団となって枯れ木に生える。乾くと著しく収縮し、堅い軟骨質になるが、水を吸えばたやすく原形に戻る。全体に暗褐色、背面はかすかに短い毛を帯び、下面は滑らかで、ここに子実層が発達し、胞子をつくる。担子器は円柱状、横の隔膜で4室に仕切られる。各室から細い角状の突起を出し、その先端に一つずつ胞子をつける。胞子は無色、腎臓(じんぞう)形。世界的に広く分布するが、日本では亜高山地帯のブナの枯れ木に多く群生する。

 近縁種にアラゲキクラゲA. polytricha (Mont.) Sacc.がある。キクラゲが北方系の菌であるのに対し、この種は南方系で平地に多い。また、本種はヨーロッパにはなく、日本のほか、東南アジアから北・南米の熱帯に分布する。キクラゲよりも大形で、背面は灰白色ないし灰褐色の短毛で覆われ、肉も堅い。ニワトコ、クワ、その他各種の広葉樹の枯れ木に生える。食品としてはやや劣るが、両種とも区別なく用いられる。とくに中国料理では欠くことができない食菌である。中国では両種とも止血効果があるとされ、産後、痔疾(じしつ)などの出血に際して用いられ、また冠状動脈疾患の予防に効があるという。

[今関六也]

料理

アラゲキクラゲ、キクラゲは、ともに「きくらげ」として利用されるが、キクラゲのほうが上質である。干しきくらげは水分10%、糖質は60%で、マンニット、トレハロースなどを含む。カルシウム、鉄、リンなど無機質は多いが、ビタミン類はDを含むエルゴステリン以外はほとんど含まれない。クラゲに似た弾力のあるこりこりした感触を味わう。中国料理のスープや肉との料理に使うほか、和食でも酢の物や鍋(なべ)料理などにし、とくに豆腐との組合せ料理が多い。乾燥して保存し、ぬるま湯につけてもどす。中国や台湾などから、乾物が多量に輸入されている。

[星川清親]


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栄養・生化学辞典 「キクラゲ」の解説

キクラゲ

 [Auricularia auricula-judae].キクラゲ目キクラゲ科キクラゲ属の食用キノコ.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のキクラゲの言及

【中国料理】より

… 鹹蛋わら灰,酒,塩に水を加えたものにアヒルまたは鶏の卵を漬けこんだもの。 銀耳白キクラゲ。産額が少なく珍重される。…

※「キクラゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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