キジハタ(読み)きじはた(英語表記)Hong Kong grouper

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キジハタ」の意味・わかりやすい解説

キジハタ
きじはた / 雉子羽太
Hong Kong grouper
redspotted grouper
[学] Epinephelus akaara

硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハタ亜科ハタ族に属する海水魚。日本海側では津軽(つがる)海峡から、太平洋側では相模(さがみ)湾から九州南岸、朝鮮半島南岸、台湾南部、中国の沿岸などに分布する。背びれ棘(きょく)が11本、臀(しり)びれ軟条数が通常8本のマハタ属に含まれる。体は楕円(だえん)形で、体高は腹びれ基底部付近でもっとも高い。頭部の背縁は凸状。両眼間隔域は平坦(へいたん)で、間隔幅は眼径大かわずかに狭い。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隅角(ぐうかく)部に大きな鋸歯(きょし)がある。主鰓蓋骨は背縁が直線状で、およそ等間隔に並ぶ3本の棘がある。間鰓蓋骨と下鰓蓋骨の縁辺は円滑。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)の後端は目の後縁下に達する。上下両顎の先端の各側に1対(つい)の短い犬歯がある。下顎の中央部の歯は2列。鋤骨(じょこつ)(頭蓋床の最前端にある骨)と口蓋骨に狭い歯帯がある。鱗(うろこ)は櫛鱗(しつりん)で小さく、側線有孔鱗数は50~54枚。背びれ棘部の鰭膜(きまく)は深く切れ込む。背びれ第3棘~第6棘は最長。尾びれの後縁は丸い。腹びれは肛門(こうもん)に達しない。体色は紫褐色で、腹部を除き、瞳孔(どうこう)より大きい、または同じくらいの大きさの多数の橙(だいだい)色の円斑紋(はんもん)で覆われる。体の背側面に不明瞭(ふめいりょう)な6本の暗色横帯があり、第1帯は項部(背びれ起部より前の後頭部)に、第3帯は背びれの第8棘~第11棘下にあり、体の背面にあるやや明瞭な暗褐色の斑紋と合流する。背びれ棘部の中央に沿って1列の暗黄色または橙色斑点が並ぶ。水深5~55メートルの岩礁地帯にすみ、稚魚は10メートル以浅でみられる。最大全長は58センチメートルに達する。雌雄対で産卵することが養殖池で観察されている。おもに釣りによって漁獲され、刺身煮つけなどにして賞味される。ハタ類中では美味で、関西地方では人気があり、香港(ホンコン)ではもっとも高価な魚の一つとされている。本種の養殖が試みられているが、仔魚(しぎょ)のときの生存率が低い。

片山正夫・尼岡邦夫 2020年12月11日]


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改訂新版 世界大百科事典 「キジハタ」の意味・わかりやすい解説

キジハタ
Epinephelus akaara

スズキ目ハタ科の海産魚。本州中部以南,朝鮮半島南部,中国に分布し,日本では瀬戸内海や日本海沿岸に多い。大阪府,和歌山県をはじめ瀬戸内海沿岸,九州北部の各地でアコ,アコウなどと呼ばれる。また,長崎県でアカアゴまたはアカアラ,富山県魚津,四方でアカラ,和歌山県田辺でアズキアコウなどと呼ばれる。全長30cmに達し,体はやや細長い円筒形で口が大きい。体にはうろこより大きな橙色または橙黄色の斑点が体中にあり,ひれは黄色っぽい。沿岸の岩礁域にすみ,魚類や甲殻類を食べる。産卵期は瀬戸内海では7~9月で,卵は直径約0.7~0.8mmの球形の分離浮性卵である。おもに釣りにより漁獲される。ハタ類中でも美味とされ,刺身,煮付けなどにされる。
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