キタリス(読み)きたりす(英語表記)red squirrel

翻訳|red squirrel

改訂新版 世界大百科事典 「キタリス」の意味・わかりやすい解説

キタリス (北栗鼠)
red squirrel
Sciurus vulgaris

ヨーロッパからアジアの北部森林帯に広く分布する樹上生のリス。日本には北海道に生息し,亜種として区別されエゾリスと呼ばれることがある。本州,九州,四国に分布するニホンリスホンドリス)よりも体が大きい。毛色はふつう背面が褐色,腹面は純白,ふさふさした柔らかな房毛(ふさげ)の生える長い尾をもつ。冬毛では耳の先端によく目だつ長い毛の房をもつ。体長20.5~22cm,尾長17~21cm,体重280g前後。大きな針葉樹の生える森林に好んですみ,夜は木の枝の上に小枝を編んでつくった巣の中で眠り,昼間,とくに日の出後の3~4時間を活発に活動して,100~400m四方に及ぶ行動圏を動き回り,木の実,芽,若葉キノコなどを食べる。繁殖期はふつう1~6月,雌は年に2~3回,妊娠期間38日前後で,2~3子,ときに6子を生む。子は体重10~15g,無毛,閉眼で生まれ,生後28~32日,体重約50gで開眼,8~10週間で離乳。寿命は飼育下で10年,野生のもので少なくとも5年。冬に備えて秋に大量の食物を貯蔵し,冬眠はしない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キタリス」の意味・わかりやすい解説

キタリス
きたりす / 北栗鼠
red squirrel
[学] Sciurus vulgaris

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科の動物。この科ではヨーロッパでもっとも普通にみられる種である。北海道を含むアジア北部およびヨーロッパの、おもに針葉樹林にすむが、このうち北海道に分布する亜種はエゾリスS. v. orientalsとよばれる。体長20~25センチメートル、尾長17~20センチメートル、体重250~480グラム。樹上生で、鋭い鉤(かぎ)づめと尾を使って敏捷(びんしょう)に樹上を動き回る。地上でも巧みに行動できるが、長くとどまることはない。子を連れた雌親以外は普通単独で行動し、高木の枝のまたや洞穴コケ、小枝、葉などでつくった丸い巣にすむ。昼行性で、食物は木の実、芽、果実、キノコ、昆虫などが多く、水もよく飲む。食物の豊富な季節にはマツの実やどんぐりを集め、地面に掘った小さな穴に埋めて隠す。冬、それらの貯蔵物を、においで探し出して利用する。秋に食物が極度に不足すると、ときに集団で大移動することがある。冬眠はしないが、悪天候が続くと数日間、巣内にとどまる。繁殖はおもに春であるが、夏、ときには冬にも行われ、1産3~8子。天敵猛禽(もうきん)類とテンである。毛皮は柔らかく良質で、襟巻などに利用される。

[今泉吉晴]

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世界大百科事典(旧版)内のキタリスの言及

【リス(栗鼠)】より

…木から木へジャンプするときは四肢を大きく広げ,多少滑空する傾向がある。多くの種類があるが,日本には北海道にキタリスSciurus vulgarisの1亜種エゾリスS.v.orientalis(イラスト),本州,四国,九州にホンドリス(ニホンリス)S.lis(イラスト)の2種が生息する。また,伊豆大島などでは台湾原産のタイワンリスCallosciurus caniceps thaiwanensisが野生化している。…

【リス(栗鼠)】より

…木から木へジャンプするときは四肢を大きく広げ,多少滑空する傾向がある。多くの種類があるが,日本には北海道にキタリスSciurus vulgarisの1亜種エゾリスS.v.orientalis(イラスト),本州,四国,九州にホンドリス(ニホンリス)S.lis(イラスト)の2種が生息する。また,伊豆大島などでは台湾原産のタイワンリスCallosciurus caniceps thaiwanensisが野生化している。…

※「キタリス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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