キノボリトカゲ(読み)きのぼりとかげ

改訂新版 世界大百科事典 「キノボリトカゲ」の意味・わかりやすい解説

キノボリトカゲ (木登蜥蜴)
Japalura polygonata

爬虫綱アガマ科の樹上トカゲ奄美,沖縄,先島の各諸島に分布し,コショクラヤ,アタカなどの地方名がある。全長約25cm,尾はその1/2~2/3ほどを占める。頭部は角ばって大きく,後頭部に黄色の小さなとさか状のうろこが1列に並ぶ。雄の咽頭(いんとう)部には飾袋はないが,繁殖期のディスプレーには黄色い部分の皮膚を広げる。木の上を長い尾でバランスをとりながら発達した細長い四肢と指ですばやく行動するが,地上ではのろく,後肢で跳ぶようにして走る。森林集落防風林にすみ,昼間は頭を下にして幹に止まっているのをよく見かける。体色を黄緑色から褐色まで変化させる保護色をもち,ふだんはあまり動かないが,人が近づくと幹の向こう側に回って隠れる。餌は昆虫,クモ類。夏季に木の根もとなどに浅く土を掘り,1~4個の白い卵を産む。先島諸島産はやや小型で体色は褐色がかり,亜種のサキシマキノボリトカゲとされる。キノボリトカゲは脅かされると四肢をふんばり口を開いて威嚇するため,現地の子どもたちはわざと怒らせて,“コショウを食べろ”(地方名コショクラヤの由来)とからかう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キノボリトカゲ」の意味・わかりやすい解説

キノボリトカゲ
きのぼりとかげ
[学] Japalura polygonata

爬虫(はちゅう)綱有鱗目(ゆうりんもく)アガマ科のトカゲ。この科のトカゲとしては日本に産する唯一種。奄美(あまみ)、沖縄両諸島に分布し、先島諸島(さきしましょとう)にはやや小形の亜種サキシマキノボリトカゲJ. p. ishigakiensisが分布する。全長20~24センチメートル、尾はその3分の2を占め細長い。頭部は大きくて角張り、胴はやや側扁(そくへん)する。四肢は細いが発達し、各指も細長い。全身が細鱗に覆われ後頭部には小さな飾り鱗(うろこ)が並び、雄ののどにはあまり顕著でない黄白色の飾り袋がある。平地から山地の森林や集落の防風林にすみ、頭を下にして幹に止まる姿をよくみかける。餌(えさ)は昆虫やクモ類である。黄緑色から緑褐色に変色するが、先島産の雄は褐色で体側に白帯が走る。キノボリトカゲ属にはほかに約15種が知られ、アジア南部に分布する。

[松井孝爾]

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百科事典マイペディア 「キノボリトカゲ」の意味・わかりやすい解説

キノボリトカゲ

キノボリトカゲ科(アガマ科)の爬虫類。別名リュウキュウキノボリトカゲ。体長10〜20cmほど。琉球諸島,台湾に分布。四肢が細長く,背中に鋸状の鱗をもつ。その名のとおり,主に樹上で生活するが,地上にも降りる。昆虫などの小動物を捕食。沖縄や奄美群島民家や道端の木にふつうに見かけるトカゲだが,近年ペット用に乱獲され,個体数が激減。保護の声が高まっている。なお,キノボリトカゲ科は,旧世界の熱帯に約300種が分布する。東南アジア産のベニクシトカゲや,南西アジア〜北アフリカに分布するハルドンアガマなどが,日本でもペットとして飼育されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キノボリトカゲ」の意味・わかりやすい解説

キノボリトカゲ
Japalura polygonata

トカゲ目アガマ科。全長約 25cmで,尾が全長のほぼ3分の2を占める。環境によって体色を変えることができ,緑色から暗褐色まで変化する。おもに木の上にすみ,幹を螺旋状に走る性質がある。本種は南西諸島に固有のトカゲであるが,キノボリトカゲ科 Agamidaeは東南アジアに種類が多くみられ,樹間を移動するため飛翼の発達したトビトカゲのようなものも生み出している。

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