キャスティング・ボート(読み)きゃすてぃんぐぼーと(英語表記)casting vote

翻訳|casting vote

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キャスティング・ボート」の意味・わかりやすい解説

キャスティング・ボート
きゃすてぃんぐぼーと
casting vote

合議体の会議における表決の結果、可否同数の場合に議長のもつ決裁権をいう。議長が表決権あるいは決裁権を有するか否かは、それぞれの合議体の規則慣習によって異なる。日本の国会では、議長は憲法上、決裁権を有することが定められている(憲法56条2項)が、慣習上表決には参加しない。イギリスでは、庶民院議長は表決権のみを有し、貴族院議長はいずれも有しない。ドイツ連邦共和国議会議長は表決権のみを有し、フランス議会議長はいずれも有しない。キャスティングボートは、二大政党の勢力がほぼ伯仲している場合、第三党が表決を左右する意味にも用いられる。

[山野一美]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キャスティング・ボート」の意味・わかりやすい解説

キャスティング・ボート
casting vote

本来議案採決にあたり,可否同数の場合,議長が行う決裁権。現在では,小政党が議会などで議案の決定権を有することをさす。与野党が伯仲した状況においては,キャスティング・ボートを握る少数政党が議案の可否に関して生殺与奪権限をもつため,大政党はこれら小政党の意見を取入れざるをえず,過大な成果を獲得することができる。

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百科事典マイペディア 「キャスティング・ボート」の意味・わかりやすい解説

キャスティング・ボート

議案採決に当たって可否同数の際に議長の行う決裁権。転じて議会中の二大勢力が伯仲し,少数派態度が問題決定を左右する場合に,この少数派が〈キャスティング・ボートを握っている〉という。

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世界大百科事典(旧版)内のキャスティング・ボートの言及

【採決】より

…なお,議院規則では,表決一般と院内での選挙とを区別してあつかっており,議長等,院の役員の選挙は無記名投票(議院規則の用語では〈無名投票〉)で,内閣総理大臣の指名は記名投票でおこなわれる。(2)キャスティング・ボート 可否同数の場合の,議長の決裁権。日本では,国会両議院の議事につき,憲法56条2項に,原則的な規定がある。…

※「キャスティング・ボート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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