キュイ

百科事典マイペディア 「キュイ」の意味・わかりやすい解説

キュイ

ロシア作曲家。ロシア国民楽派(五人組)の一人ナポレオン戦争で負傷してリトアニアに残留したフランス士官とリトアニア人女性との間に,ビリニュス(当時ロシア領ビルノ)で生まれる。生地でポーランドの作曲家S.モニューシュコ〔1819-1872〕に作曲の手ほどきを受けたのち,1851年ペテルブルグの陸軍工兵学校に入学。のち陸軍工兵大将となり,築城学の権威としても知られた。学生時代からバラーキレフ親交を結び,その音楽運動に参加。作曲家,批評家として活躍した。オペラ管弦楽曲のほか,歌曲ピアノの小品がある。→ダルゴムイシスキー
→関連項目ムソルグスキー

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改訂新版 世界大百科事典 「キュイ」の意味・わかりやすい解説

キュイ
Tsezar' Antonovich Kyui
生没年:1835-1918

ロシアの作曲家。ロシア国民楽派(五人組)の一人。ナポレオン戦争の際(1812)に負傷してリトアニアに残留したフランス人を父親として,ビルニュスに生まれた。そこでモニューシュコに作曲を習ったが,1851年からペテルブルグの工兵学校に学び,のちには築城学の権威者になった。音楽家としては生涯素人の域を出なかったが,いくつかのオペラやサロン的な小品の作曲者,五人組の主張を代弁する音楽批評家として活躍した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キュイ」の意味・わかりやすい解説

キュイ
きゅい
Цезарь Антонович Кюи/Tsezar' Antonovich Kyui
(1835―1918)

ロシアの作曲家、音楽評論家。幼時から音楽の基礎教育を受けたが、ペテルブルグ陸軍工兵学校を卒業。1856年「五人組」の理論家バラキレフと知り合い音楽活動に入るが、同時に母校教授を務めた。フランス系リトアニア人である彼の作風は、ムソルグスキーら民族的色彩の強い他の「五人組」の作曲家とは異なり、『ウィリアム・ラトクリフ』(1869)をはじめ10曲のオペラにはマイヤベーアの影響が感じられ、ピアノ小曲や多数の歌曲はショパン風の叙情的旋律をもっている。しかし批評家として「五人組」の活動を支えた功績は大きい。なお、彼の作品でバイオリン独奏曲としてもっとも親しまれている『オリエンタル』は、24の小品からなる『万華鏡』(1893)のなかの第9曲にあたる。

[寺本まり子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キュイ」の意味・わかりやすい解説

キュイ
Cui, César Antonovich

[生]1835.1.18. ビルノ
[没]1918.3.24. ペテルブルグ
フランス系のロシアの作曲家。ポーランドに生れ,S.モニューシコに作曲を学ぶ。 1851年ペテルブルグの工兵学校に入学。卒業後,同校の講師となり,78年には築城学の教授になる。彼の音楽への興味は,M.バラキレフとの出会いで決定的となり,ロシア国民学派の「五人組」の一人として活躍した。シューマン,ショパンに傾倒していた彼の作風は,サロン的な雰囲気を抜け出しえず,初期には五人組の代弁者として,評論活動に重要な役割を果したが,のち次第に五人組から離れた。主要作品はオペラ『ウィリアム・ラトクリフ』 (1861~68) 。その他ピアノ曲,歌曲多数。

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「キュイ」の解説

キュイ

フランス系ロシアの作曲家、批評家。ロシア五人組の一人。少年期にはピアノや和声学、対位法のレッスンを受けたが、1851年にペテルブルグ工科学校に入学、55年からは軍事技術アカデミーで学んだ。専門は築城学 ...続き

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世界大百科事典(旧版)内のキュイの言及

【ロシア国民楽派】より

… 文学ではチェルヌイシェフスキーやドブロリューボフを中心に《現代人》誌に集まったグループ,絵画では〈芸術家組合Artel’ khydozhnikov〉や〈移動展派〉のグループが生まれたが,それらと同様な立場にある。評論家スターソフが思想的中心となり,作曲家バラーキレフを指導者として,キュイ,ムソルグスキー,A.P.ボロジン,リムスキー・コルサコフらの作曲家が集まった。キュイは彼らの立場の宣伝者・批評家としても健筆を振るった。…

※「キュイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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