キリハシ(読み)きりはし(英語表記)jacamar

改訂新版 世界大百科事典 「キリハシ」の意味・わかりやすい解説

キリハシ (錐嘴)
jacamar

キツツキ目キリハシ科Galbulidaeの鳥の総称。この科の鳥はくちばしと尾が長く,脚の短い流線型のほっそりした体つきをしている。くちばしが錐のようにとがっていて,まっすぐで細長いところからその名がついた。脚は,キツツキ目の他の鳥と同じように対趾足(たいしそく)である。全長12~30cm。羽色は上面金属光沢のある緑色黒色で,下面は黄褐色赤褐色,あるいは黒色をしている。雌雄ともよく似た羽色をしているが,一般に雄はのどが白く,雌は褐色である。熱帯林内の道路沿いや川辺の林縁,伐採跡,あるいは疎林に単独かつがいですむ。見晴らしのよい枝に体を立てて止まり,くちばしを斜め上に向けて周囲を見張り,飛んでくる昆虫を見つけると,すばやく飛び出していってパチッとくちばしを鳴らしながらくわえとり,再び元の枝に戻って食べる。チョウトンボ好み,昆虫の翅は枝にうちつけて取り除き,柔らかな体を食べる。繁殖期には,道路わきの岸,川岸斜面,あるいはシロアリの巣塚などにくちばしで巣穴を掘り,脚で土をかき出しながら巣穴を掘り進み,奥を広げて産座をつくり,その奥の土の上にじかに1腹2~4個の白い卵を産む。

 メキシコ南部からブラジル南部にかけて約15種が分布する。代表種としては,メキシコ南部からブラジルに広く分布するアカオキリハシGalbula ruficaudaがいる。全長23cmの中型種で,上面が金属光沢のある緑色,のどと胸の境に緑色の太い帯がある。下面と緑色の中央2羽の尾羽を除いた尾羽は赤褐色で,雄はのどが白く,雌では淡黄色をしている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリハシ」の意味・わかりやすい解説

キリハシ
きりはし / 錐嘴
jacamar

鳥綱キツツキ目キリハシ科に属する鳥の総称。この科Galbulidaeの仲間は、アメリカハチクイまたはゴシキドリモドキとよばれたこともある。南メキシコから南ブラジルにかけて熱帯アメリカの主として低地常緑樹林に約15種が生息する。全長約13~30センチメートル。大半の種は上面が美しい金属光沢を有し、嘴(くちばし)が細長くとがっていて、大きなハチドリという印象を受ける。まったくの昆虫食で、普通は枝にじっと止まっていて、飛んでくるチョウやトンボを見張り、みつけるとすばやく飛び立ってそれを空中でとらえ、枝に戻って食べる。単独か雌雄で暮らし、土の崖(がけ)や急斜面などに、奥行が数十センチメートルで入口の径が数センチメートルの巣穴を、雌雄で掘って繁殖する。樹上のシロアリの巣に巣穴を掘ることも知られている。1腹の卵数は2~4個で、雌雄で約3週間抱卵する。育雛(いくすう)も雌雄で行うが、スズメ目の鳥と異なって、雛(ひな)の糞(ふん)を運んで捨てることはないといわれる。

浦本昌紀

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キリハシ」の意味・わかりやすい解説

キリハシ
Galbulidae; jacamars

キツツキ目キリハシ科の鳥の総称。18種からなり,中央アメリカ南アメリカに分布している。全長 14~34cm。は錐(きり)のように細長くとがり,また,尾羽も長く,スマートな体形をしている。多くの種は,背面が金属光沢のある青や緑の羽毛に覆われていて美しい。雌の羽色は雄に似ているが,一般に雄のほうが鮮やかである。熱帯の森林に生息し,留まった枝から飛び出して昆虫類をとる。土手などに横穴を掘り,その奥に産卵し繁殖する。樹上のシロアリの巣に穴を掘る種もある。

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