キリンソウ(読み)きりんそう

改訂新版 世界大百科事典 「キリンソウ」の意味・わかりやすい解説

キリンソウ (黄輪草)
Sedum kamtschaticum Fisch.

ベンケイソウ科多年草で,葉は鋸歯があり,花は5~7月に咲き黄色で集散花序多数群が。その状態から黄輪草の名がついたと思われるが,麒麟草とする説もある。日本では九州から北海道に分布し,変異が多い。江戸時代から栽培される。北海道産のものはエゾキリンソウと呼ばれ,茎はよく分枝し,下部は木質化する。越冬芽は地上で形成し,地下に走出枝を出す。本州海岸のキリンソウは直立し,高さが30cmくらいになる。冬は地上部が枯れ,地下の根茎が越冬するが,走出枝はない。栽培はこの型が多いが,苞葉が大きいので花がやや見劣りする。エゾキリンソウや本州の山地の短茎の型は苞葉が小さく,黄花がかたまって咲き,美しい。種としては中国,朝鮮,サハリンからカムチャツカに分布する。近縁ホソバノキリンソウS.aizoon L.は茎が直立し,葉には鋸歯が中部以下まであり,草原に生え,キリンソウがふつう岩場に多く,鋸歯が下部にない点で,区別できる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリンソウ」の意味・わかりやすい解説

キリンソウ
きりんそう / 麒麟草
[学] Phedimus aizoon (L.) 't Hart var. floribundus (Nakai) H.Ohba
Sedum aizoon L. var. floribundum Nakai

ベンケイソウ科(APG分類:ベンケイソウ科)の多年草。葉の形や大きさ、茎高などの変異性に富む。根茎があり、毎年高さ10~50センチメートルになる花茎を多数束生する。葉は普通は互生し、質が厚く、広倒披針(ひしん)形または倒卵形で長さ2~5センチメートル、縁(へり)に鈍い鋸歯(きょし)がある。5~7月、多数の黄色花を平面状に密生した集散花序を頂生する。花は径約1センチメートル、5数性で雄しべは10本。花弁披針形。雌しべ5本、子房は熟して星形の果実となる。山地の草原、林縁、崖地(がけち)、海岸などに生え、日本を含む東アジアに広く分布する。

[大場秀章 2020年3月18日]


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百科事典マイペディア 「キリンソウ」の意味・わかりやすい解説

キリンソウ

北海道〜九州の日当りのよい山地草原や海岸の岩地にはえるベンケイソウ科の多年草。茎は多数群生することが多く,高さ5〜30cm。葉は緑色多肉で,長さ2〜4cmの広披針形。夏,茎頂に多数の枝を分かち,黄色5弁の花を密につける。観賞用に栽培もされる。山中にはえ,全体がやや大きいホソバノキリンソウは,高さ20〜60cmとなり,茎が少数ずつはえて,群生することはない。葉は長さ3〜6cm。

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