世界大百科事典(旧版)内のキルヒホフ,J.W.A.の言及
【オデュッセイア】より
…とくに終末部分の処理については古代より疑念が表明されてきた。この事実はJ.W.A.キルヒホフの分析的研究以来今日までの100年間専門学者たちによって詳細に検討されてきているが,他方,きわめてモダンで現実的な人間オデュッセウスがおとぎ話の国で遭遇する食人鬼の恐怖,魔女たちの誘惑,とりわけ冥府訪問の段で語られる彼岸体験などは,おのおのの素材や処理の異質性もさることながら,後世の詩人や思想家たちには深い寓意性を示唆し,新しい人間体験を語る文学創造の契機となることが多かった。ローマの詩人ウェルギリウスは《アエネーイス》叙事詩の前半部分で《オデュッセイア》を範としたと伝えられるが,とりわけ第6巻の構成はホメロスを深く意識しながらローマ叙事詩の独自の精神性を明らかにしている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」