キンクロハジロ(英語表記)Aythya fuligula; tufted duck

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キンクロハジロ」の意味・わかりやすい解説

キンクロハジロ
Aythya fuligula; tufted duck

カモ目カモ科。全長 40~47cmの潜水採食性カモ(→潜水カモ類)。雄は頭部が黒く紫光沢があり,頭上から口頭に冠羽(→羽冠)が伸びる。虹彩は黄色で,和名の「キン」の由来となった。は灰青色で先端が黒い。胸と背面,尾が黒く,腹部は白い。は黒く,飛ぶとよく目立つ白帯がある。雌は冠羽が短く,雄の黒い部位が黒褐色となり,腹部は褐色。ヨーロッパからシベリア東部,中国北部,カムチャツカ半島にかけて繁殖分布する。イギリスを含めヨーロッパ南西部では留鳥だが,ほかの繁殖地ではほとんどの鳥がアフリカ北部からインド,中国南部,日本朝鮮半島に渡って越冬する。日本には冬鳥(→渡り鳥)として全国の湖沼河口,内湾などに多数渡来する。北海道では少数が繁殖し,一年中生息する。巣は水辺草原や水中の草上などに枯れ草を敷いてつくる。食べ物は貝類が多いが,昆虫,エビ,カエル,水生植物なども食べる。(→ガンカモ類

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「キンクロハジロ」の意味・わかりやすい解説

キンクロハジロ (金黒羽白)
tufted duck
Aythya fuligula

カモ目カモ科の鳥。全長約44cm,雌はやや小さい。ユーラシア大陸の亜寒帯以北で繁殖し,冬はヨーロッパ中南部,アジア南部などで越冬する。日本では北海道で少数が繁殖しているが,大部分は冬鳥として渡来し,全国の湖沼,池,河川など淡水の場所に多く見られる。餌は貝類,小エビなどの甲殻類,水生昆虫類,小魚類など動物質が多いが,植物の芽や葉も食べる。巣はヨシイグサなどの生えた沼の水ぎわ近くにつくり,1腹8~10個の卵を産む。抱卵期間は23~26日,雛は孵化(ふか)後しばらくすると泳ぐことができる。マガモのような水面ガモ(淡水ガモ)類の雛は危険にあうと列をつくり親のあとを追って逃げるが,キンクロハジロなどの潜水ガモハジロガモ)類では放射状に逃げる。雄では体は,わき,腹が白色で他は黒色。頭部は紫光沢をもち,後頭にはっきりした冠羽がある。雌は黒褐色で,わき,腹は褐色。眼は金色。キンクロハジロの名は金色の眼をした体が黒いハジロガモを意味するものと思われる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンクロハジロ」の意味・わかりやすい解説

キンクロハジロ
きんくろはじろ / 金黒羽白
tufted duck
[学] Aythya fuligula

鳥綱カモ目カモ科の鳥。ヨーロッパからシベリア、樺太(からふと)(サハリン)、日本では北海道釧路(くしろ)の塘路(とうろ)湖で繁殖が知られ、冬鳥として淡水湖沼、半塩水域、さらに瀬戸内海の沿岸にも渡来し、普通にみられる種である。また南は台湾、小笠原(おがさわら)諸島、さらに南洋諸島まで達するものがある。潜水して底生の動植物質を食べる。雄の成鳥は全長43.5センチメートル、頭部に紫緑色の光沢があり、後頭には豊かな冠羽の束が垂れている。胸と背は黒色、わき羽がひょうたん形の純白で、黒白の美しい羽色をしている。また翼鏡には白帯がある。嘴(くちばし)は幅広く灰青色で先端は半円状に黒く、虹彩(こうさい)は黄金色に輝く。雌は全長37.5センチメートル、全般に黒褐色で、雄よりも短い羽冠がある。雄の幼鳥は雌に似るが、わきは汚白色である。

[黒田長久]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「キンクロハジロ」の意味・わかりやすい解説

キンクロハジロ

ガンカモ科の鳥。翼長20cm。暗褐色で腹部は白い。ユーラシア大陸の北緯40°以北で繁殖。日本には冬鳥として渡来し,全国各地の湖沼,入江等に見られる。北海道では少数繁殖。巧みに潜水して水底の貝や昆虫等を食べる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android