クアッド(読み)くあっど(英語表記)Quad(Quadrilateral Security Dialogue)

デジタル大辞泉 「クアッド」の意味・読み・例文・類語

クアッド(quad)

《「クワッド」とも》多く複合語の形で用い、四つの、四倍の、などの意を表す。「クアッドプレー」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クアッド」の意味・わかりやすい解説

クアッド
くあっど
Quad

日本、アメリカ、オーストラリアインドの4か国の政府首脳や外務大臣らによる外交安全保障や経済問題に関する協議会合の通称。英語名はQuadrilateral Security Dialogueで、英語で「四つの」を意味するQuadからこうよばれる。日本では日米豪印戦略対話、4か国戦略対話と訳される。民主主義、自由経済、法の支配といった共通の価値観をもつ4か国が太平洋・インド洋地域の安全保障を維持し、軍備増強を続ける中国牽制(けんせい)するねらいがある。「自由で開かれたインド太平洋の実現」を目標に掲げ、外交・安全保障のほか、半導体などの重要・先端技術の開発・確保、インフラ整備、気候変動対策、ワクチン接種など幅広い分野で協力に取り組んでいる。2004年のスマトラ沖地震で4か国が被災国支援で協力した経験に基づき、2006年(平成18)、日本の首相(当時)の安倍晋三(あべしんぞう)が提唱。安倍が首相へ返り咲いてクアッド構想が再浮上し、2017年に局長級会合、2019年に外務大臣会合、2021年(令和3)9月に首脳会合を開いた。安全保障面では、アメリカ・インド両軍の合同演習「マラバール」に、2015年に日本が定期参加すると表明。2020年にはベンガル湾やアラビア海での3か国訓練にオーストラリア軍が加わった。民主主義陣営10か国が協力して中国に対抗する「D10」構想を提唱するイギリスはクアッドに参加する意向を表明している。

 中国の軍備増強やロシアのウクライナ侵攻をきっかけとして、世界で友好国が外交・安全保障面や経済面で連合を組む動きが加速している。太平洋・インド洋地域では、クアッドのほか、2021年に米英豪の安全保障パートナーシップ、オーカスAUKUSがスタートし、2022年にはアメリカ大統領バイデンの主導で日米印豪韓など13か国によるIPEF(インド太平洋経済枠組み)が始動した。一方、中国は広域経済圏構想「一帯一路」を掲げ、RCEP(アールセップ)(東アジア地域包括的経済連携)に加わり、2021年にTPP(環太平洋経済連携協定)や、シンガポールニュージーランドチリの3か国によるデジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)への加盟を申請した。

[矢野 武 2022年10月20日]

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知恵蔵mini 「クアッド」の解説

クアッド

日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による外交・安全保障の協力体制「日米豪印4カ国戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue)」の通称。インド太平洋地域での中国の軍事的・経済的な影響力の拡大に対抗する非公式な枠組みとして、2019年に発足した。外交・安全保障にとどまらず、インフラ整備、テロ対策、サイバーセキュリティ、新型コロナウイルス感染症対応、気候変動対策などの幅広い分野においても協力・協調していくとしている。

(2020-2-25)

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