クイナモドキ(英語表記)Mesitornithidae; mesites

改訂新版 世界大百科事典 「クイナモドキ」の意味・わかりやすい解説

クイナモドキ (秧鶏擬)
mesite
roatelo

ツル目クイナモドキ科Mesoenatidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科はムナジロクイナモドキMesitornis variegata,クイナモドキM.unicolorおよびメスアカクイナモドキMonias benschiの3種からなり,マダガスカル島特産である。全長約25~30cm。どの種も頭上から背,翼,尾は褐色,胸腹部は白色ないし淡黄褐色で,種によっては白と黒の眉線や胸腹部に褐色斑がある。くちばしはやや長めで,少し下に湾曲している。脚もやや長い。粉綿羽(ふんめんう)の部分が五つあるのも特徴である。翼は退化し,メスアカクイナモドキは飛翔(ひしよう)力がない。他の2種も飛翔力はきわめて弱い。脚はよく発達し,ほとんど地上で生活している。低木の茂る草地森林に生息して,食物は各種の種子漿果(しようか)や昆虫類である。巣は地上2m以下の,かけ上がれる程度の高さの樹上小枝を集めてつくる。詳しい生態は明らかではないが,1腹1~3個の卵を産み,孵化(ふか)した雛は綿羽に覆われていて,直ちに走行し,親に導かれて巣を離れる。メスアカクイナモドキでは,雌のほうが雄より赤みの強いはっきりした羽色をしている。この種は1妻多夫性で,抱卵は雄だけが行うといわれている。roateloという英名は,マダガスカル島の原住民呼称に由来する。mesiteは学名からきた名。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クイナモドキ」の意味・わかりやすい解説

クイナモドキ
Mesitornithidae; mesites

クイナモドキ目クイナモドキ科の鳥の総称。以前は形態上の類似からツル目に分類されていた。ムナジロクイナモドキ Mesitornis variegatus,クリイロクイナモドキ M. unicolor,メスアカクイナモドキ Monias benschi の 3種からなる。全長 25~30cm。赤褐色,褐色,灰色黒色などの地に明暗の斑のある地味な羽色をしている。は退化して短く,飛翔力がきわめて弱いため,おもに地上で生活している。,脚はやや長めだが,低木の茂みや森林に生息しているので,趾(あしゆび)は湿地のぬかるみなどに暮らすクイナ類と違って長くはない。サギ類やハト類などに見られる粉綿羽という崩れて粉になる羽毛が生えている。この粉は羽毛にこすりつけ,防水や汚れ防止に使われる。独特の動物相が見られるマダガスカル島の固有種である。なお,メスアカクイナモドキは,雌が雄よりやや大きく,羽色も鮮やかで,繁殖期における雌雄の生態が普通の鳥とは異なり,一妻多夫制で,雄が抱卵,育雛にあたる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クイナモドキ」の意味・わかりやすい解説

クイナモドキ
くいなもどき / 秧鶏擬
mesite
roatelo

鳥綱ツル目クイナモドキ科に属する鳥の総称。この科Mesitornithidaeはマダガスカル島の特産で、2属3種が含まれる。全長25~30センチメートル。3種ともツグミよりやや大きめの褐色ないし灰色がかった鳥で、森林や低木林につがいか小群ですみ、地上で生活する。飛ぶことは多少できると思われるが、追われたときでもめったに飛ぶことはなく、走って逃げる。食物は地上の種子と昆虫類である。低木や若木の低い枝の上に、小枝を集めて皿形の巣をつくり、産座にはごくわずかの葉や枯れ草を敷くだけで、1腹1~3個の卵を産むが、繁殖の詳細はまだわかっていない。また鳴き声についても確かな記録がない。この科はツル目に分類されるが、類縁関係もはっきりしていない。

[森岡弘之]

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