クサフグ(英語表記)grass puffer
Takifugu niphobles

改訂新版 世界大百科事典 「クサフグ」の意味・わかりやすい解説

クサフグ
grass puffer
Takifugu niphobles

フグ目フグ科の海産魚。青森県以南,沖縄,朝鮮半島南部に分布する。各地沿岸にもっともふつうに見られるフグで,体の背面は灰青緑色の地に多数の淡黄色斑点が散在し,腹面は白い。胸びれの後方背びれの基部に黒い斑紋がある。背,腹両面に棘鱗(きよくりん)がある。全長25cm。海底の砂に潜る習性があり,ときには淡水域に入ることもある。産卵期は5~6月で,大潮の前後の満潮時に,岩礁性の海岸のなぎさに群れをなして集まり,乱舞するようにして砂れきの間に放卵,放精を行う。卵は次の大潮の満潮時に海水につかると孵化(ふか)し,仔魚しぎよ)は引潮によって運び去られる。同様な現象はトウゴロウイワシ近縁のカリフォルニア・グラニオンでも知られている。フグ毒は筋肉では弱いが,肝臓,腸,卵巣ではもっとも強い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサフグ」の意味・わかりやすい解説

クサフグ
くさふぐ / 草河豚
[学] Takifugu niphobles

硬骨魚綱フグ目フグ科に属する海水魚。青森県以南の各地、および黄海東シナ海の沿岸に分布する。全長25センチメートルに達し、体の背面と腹面に小棘(しょうきょく)が散在する。体の背側は灰青緑色で多数の小白色円点が散在し、腹側は白い。産卵期は5~7月で、大潮の前後の数日間、満潮時に大群をなして岩礁性の海岸の小石の間に産卵する。卵巣、肝臓、腸に猛毒があり、皮膚に強毒、肉と精巣弱毒がある。砂に潜る習性があり、河川にも入る。

[松浦啓一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クサフグ」の意味・わかりやすい解説

クサフグ
Takifugu niphobles

フグ目フグ科の海水魚。全長 15cm内外。背面は青緑色で,多数の小白色点がある。腹面は白い。胸鰭の後方および背鰭基底には黒色斑がある。産卵期(初夏)には大群をなして海岸へ集まり,潮間帯の小石の間に産卵する。沿岸,内湾に最も普通に見られるフグで,北海道を除く日本沿岸,東シナ海からベトナムに分布する。肝臓,卵巣,腸は猛毒,皮膚は強毒,筋肉と精巣は弱毒。

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世界大百科事典(旧版)内のクサフグの言及

【月周リズム】より

…砂中に産まれた卵は次の大潮時に孵化(ふか)して再び海へ帰る。日本産のクサフグも5月から8月の新月や満月後の数日間に沿岸の産卵場に多数集まり産卵する。このほか,月の位相と関連した生殖現象は,サンゴ,ウニ,イタヤガイなど多くの海産動物をはじめ,海産の藻類にも知られている。…

※「クサフグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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