クズリ(読み)くずり(英語表記)wolverine

翻訳|wolverine

改訂新版 世界大百科事典 「クズリ」の意味・わかりやすい解説

クズリ (屈狸)
wolverine
Gulo gulo

太くたくましい四肢と幅の広い手足をもつ外観がクマに似た食肉目イタチ科の哺乳類。体毛は長く,密生し,全体に黒褐色だが,額から尾の基部にかけての体側に淡褐色の帯があり,また,胸には月の輪に似た白斑がある。体長65~87cm,尾長17~26cm,体重11~32kg。ヨーロッパ,アジア,北アメリカのおもに北部針葉樹林帯に分布。繁殖期を除き単独で行動し,2000km2にもなる広大な行動圏を徘徊して,ジャコウジカノウサギ,ネズミ,ライチョウなどを狩り果実を食べる。また,しばしばわなに掛かった獲物を奪うため猟師にきらわれる。気が荒く攻撃的なために天敵は少ないが,ピューマ,クマ,オオカミなどの強力な捕食者に襲われた場合も,イタチ科特有の肛門腺からのくさい分泌物によって撃退することができる。雌は木の洞や岩穴を巣として,2~5月に1産1~5子を生む。子は親と異なり純白の毛で包まれ,夏の終りまで親とともに過ごす。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クズリ」の意味・わかりやすい解説

クズリ
くずり
wolverine
glutton
[学] Gulo gulo

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。北ヨーロッパからシベリアアラスカ、カナダの針葉樹林にすむ。体長60~85センチメートル、尾長17~26センチメートル、イタチ科としては大形の種である。全体に黒褐色であるが、肩からわき腹、腰に淡褐色の帯がある。ずんぐりした体つきであるが、四肢は太く、クマのような感じである。普通、単独で生活し、広い縄張りをもつ。木登りは巧みであるが、普段は地上性で、人間とオオカミ以外の動物ならなんでも襲うといわれ、死体も食べるほか、果実も食べる。交尾期は不明であるが、出産は2~5月、2~5子を産む。子は約2年間雌親といっしょに暮らすが、その後は縄張りから追い出される。多くの動物を殺し、残った肉を隠す習性があるため、大食漢(グルトン)ともよばれ、牧畜民から嫌われてきたし、その凶暴さを示す伝説も多い。しかし、飼育下ではむしろ非常に慎重な動物である。毛皮は良質でないが、雪がつきにくく、帽子に使われる。「クズリ」はギリヤーク語からの転訛(てんか)で、中国語(漢字)は熊貂、狼と書き、屈狸は誤りである。

[朝日 稔]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クズリ」の意味・わかりやすい解説

クズリ
Gulo gulo; glutton; wolverine

食肉目イタチ科。体長 70cm内外,尾長 16~25cmで,イタチ類中の最大種。体は黒褐色で,小型のクマに似る。鋭い爪と強い顎および歯をもつ。四肢は太く,半蹠行性。性質は獰猛で,小動物やときにトナカイなどの大型の動物も襲う。おもに夜行性であるが,日中活動することもある。木登りや泳ぎがうまい。亜寒帯から北極圏の森林 (タイガ) 地帯に分布する。

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百科事典マイペディア 「クズリ」の意味・わかりやすい解説

クズリ

食肉目イタチ科。体長80cm,尾20cmほど。形はアナグマに似るが,体毛は長く黒褐色,肩から体側に黄褐色の帯がある。ユーラシア大陸,北米北部のツンドラとタイガに分布。森林にすみ,昼は樹洞・岩穴で眠り,夜行性。ジャコウジカ,ノウサギ,鳥,果実などを食べる。性質は凶暴。1腹2〜4子。毛皮は敷物などにされる。

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