クブ族(読み)クブぞく(英語表記)Kubu

改訂新版 世界大百科事典 「クブ族」の意味・わかりやすい解説

クブ族 (クブぞく)
Kubu

インドネシア,スマトラ島南部の東側,パレンバン地方の河川であるムシ,ラワス,トゥンブシ,バタン・ハリの流域で放浪生活をつづけ,20世紀に入って定住化した民族。プロト・マレー人に属し,人口は1930年のセンサスでは1632人とされたが,実際はもっと多い。五つのマルガ氏族)に分かれ,首長(ディパティ)が林産物を集める長であった。オランダ植民地時代から定着農耕を強制しても森林の放浪をやめなかった。兄と妹の近親相姦の伝説をもち,奥地に住むから,ウル族(上流の人),ルブ族(沼沢地の人),オラン・ダラット(奥地の人),オラン・ラウト(海の人)などと外部の者は呼んできた。労働や水浴きらい,“不潔な”食物を食べ,草ぶき屋根の壁のない小屋に住み,屋内には家具もない。1898年にパレンバンで石油が発見された時期から文明社会との接触をもち,貨幣を使用しはじめた。一部の開化したクブ族は,クブという呼名マレー人による軽蔑的な名称であるため,この名を好まない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クブ族」の意味・わかりやすい解説

クブ族
クブぞく
Kubu

インドネシアのスマトラ島東部低地からバリサン山脈にかけて散在するベッダ系の一民族。かつてはマレー諸島に広く分布していたといわれるが,その後マレー人などに同化され,かなり減少した。元来は狩猟採集民で,バンド単位として移動する原始的狩猟採集生活を営んでいたが,農耕に従事する者が増えた。かつては杭上家屋に住んでいた。狩猟の際には鳥占いを行ない,シャーマニズムもみられる。

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