クマバチ(読み)くまばち(英語表記)carpenter bee

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クマバチ」の意味・わかりやすい解説

クマバチ
くまばち / 熊蜂
carpenter bee

昆虫綱膜翅(まくし)目コシブトハナバチ科のクマバチ属Xylocopaの総称。クマンバチともいう。大形の花に集まるいわゆるハナバチで、主として熱帯地方に繁殖するが、寒冷地を除く世界各地に分布し、1属で500余種が知られ、体長22ミリメートル内外。成虫春先に活動し、交尾後は枯れ枝や木造家屋の垂木(たるき)などの堅い木材中に穴をあけて、奥から順に数個の育房をつくる。台湾以南には竹材中の空洞に営巣する種類もある。日本ではフジやキリの花に多く集まる。梅雨(つゆ)明けころに羽化した雌雄の成虫は翌春まで同じ巣に母バチと同居するが、この間長い時間をかけて内部生殖器が発達していく。母バチは1年半ぐらい生存する。卵は長大で約15ミリメートル、育房に1個ずつ産みつける。日本には北海道を除く各地にクマバチXylocopa appendiculata circumvolansが普通。また、南西諸島には固有種アシグロセジロクマバチX. amamensis、オキナワクマバチX. flavifrons、アカアシセジロクマバチX. albinotumを産する。このような小島弧に3種もの固有種を産することは世界的にも類のない珍しい現象である。小笠原(おがさわら)諸島には固有種オガサワラクマバチX. ogasawarensisを産する。クマバチには天敵らしいものはほとんどみつかっていないが、高知県では甲虫類のトサヒラズゲンセイ(ツチハンミョウ科)がクマバチの巣に寄生する。

[平嶋義宏]


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改訂新版 世界大百科事典 「クマバチ」の意味・わかりやすい解説

クマバチ (熊蜂)
Xylocopa appendiculata

膜翅目ミツバチ科の昆虫。ハナバチの1種。俗称クマンバチ。体長約22mmで,体は黒色,頭部に黄紋がある。胸部背,側面に黄色の毛を,ほかには黒色の毛をよそう。マルハナバチに似るが毛は少なく,体はいくぶん扁平。大型で刺針があるため恐れられるが,攻撃性はなくつかまないかぎり刺さない。日本固有種で,本州,四国,九州,対馬,屋久島に分布する。クマバチ属は世界に広く分布するが,ほとんどの種は熱帯亜熱帯に生息する。単独生活を行い年1世代。雌雄ともに母巣などで成虫越冬し,雌は春に受精して巣づくりを始める。強大な大あごで木材や枯枝に長い穴を開け(前年巣も利用する),奥から順に仕切って数個の育房をつくる(このため英名はcarpenter bee)。間仕切りには房壁から削った材粉を使う。ヤマフジなどのマメ科植物から好んで花粉を集めて各室に貯食し,15mmにも及ぶ長大な卵を産みつける。1匹の雌の産卵数は約8個。夏に羽化した成虫は未成熟のまま母巣にとどまり冬を迎える。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クマバチ」の意味・わかりやすい解説

クマバチ
Xylocopa appendiculata

膜翅目ミツバチ科。体長 23mm内外。体は短太,黒色で光沢があり,胸側と胸背は中胸背板中央の平滑部を除き黄色の長毛が密生する。頭部,腹部の毛は黒色で,雌は頭頂に黄色毛のあるものが多い。雌では頭部は大きく,複眼は比較的小さいが,雄では頭部は小さく,複眼は比較的大きく,顔面に黄色部がある。翅は黒褐色で紫色光沢がある。枯れた木材の中にトンネルを掘って営巣する。本州,四国,九州,屋久島,対馬,朝鮮,中国に分布し,日本産は亜種 X. a. circumvolansという。なお奄美大島,徳之島,宝島 (吐 噶喇列島) には頭頂と胸部の毛が白いセジロクマバチ X. amamiensisを,八重山諸島には前種に似るが肢の毛が赤褐色のアカアシセジロクマバチ X. albinotumを,沖縄本島には全体黒色のオキナワクマバチ X. okinawanaを産する。

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百科事典マイペディア 「クマバチ」の意味・わかりやすい解説

クマバチ

膜翅(まくし)目コシブトハナバチ科の昆虫の1種。体長23mm内外,黒色,胸部は黄色の毛を密生。北海道を除く日本,朝鮮,中国に分布。雌は枯木などに穴をあけ,数室に区切って花粉と蜜をたくわえ幼虫の餌とする。捕えない限り人を刺すことはない。クマバチ類は熱帯地方に種類が多い。なお俗称のクマバチ(クマンバチ)はスズメバチ類のこと。

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