クライスラー(Fritz Kreisler)(読み)くらいすらー(英語表記)Fritz Kreisler

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クライスラー(Fritz Kreisler)
くらいすらー
Fritz Kreisler
(1875―1962)

オーストリア出身のアメリカのバイオリン奏者、作曲家。20世紀前半を代表する名手であり、気品格調の高さで世界中の音楽愛好者に敬愛された。1875年2月2日ウィーンに生まれ、同地音楽院とパリ音楽院に学び、12歳で音楽教育を終える早熟ぶりをみせたが、一時音楽から遠ざかって医学と美術を修めた。1899年ニキシュ指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と協演、本格的な演奏活動に入る。第一次世界大戦後にオーストリアの陸軍士官として従軍、負傷したが、戦後ただちに楽界に復帰、世界的な名声を博す。1923年(大正12)の春に来日。ナチスを逃れて38年にフランス市民権を、さらに39年アメリカに移住して、43年アメリカ市民権を取得。47年ニューヨークのカーネギー・ホールの演奏会を最後に引退し、62年1月29日、同地で没。情緒豊かな温かい表現で聴き手の心に訴える演奏を行い、一世を風靡(ふうび)した。作曲にはオペレッタ作品もあるが、ウィーン情趣をたたえたバイオリン独奏用小品『愛の喜び』『愛の悲しみ』『ウィーン奇想曲』が名高い。またベートーベンをはじめとするバイオリン協奏曲のカデンツァは、多くのバイオリン奏者によって愛奏されている。

[岩井宏之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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