クレアチンキナーゼ

デジタル大辞泉 「クレアチンキナーゼ」の意味・読み・例文・類語

クレアチン‐キナーゼ(creatine kinase)

骨格筋心筋などの細胞に存在し、クレアチンリン酸の合成・分解を触媒する酵素筋肉の収縮時にはクレアチンリン酸クレアチンリン酸に分解し、ADPリン酸基を転移してATPを補給する。休息時にはATPのリン酸基を一つクレアチンに転移し、クレアチンリン酸を合成する。クレアチンホスホキナーゼCK(creatine kinase)。

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四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「クレアチンキナーゼ」の解説

クレアチンキナーゼ

基準値

50~200U/ℓ(JSCC勧告法)

クレアチンキナーゼとは

 筋肉に多量に存在する酵素で、筋肉細胞の代謝に重要な役割を果たしている。

■図① 急性心筋梗塞における血中酸素の変動


筋肉の病気を調べる検査です。検査を受けるときは、4日前頃から激しい運動は控えてください。筋肉の病気が特定できない場合は、甲状腺疾患を疑います。

急性心筋梗塞、筋ジストロフィー症などで高値に

 クレアチンキナーゼは、筋肉にたくさん含まれているため、筋肉の病気を疑うとき、この検査を行います。

 筋肉に傷害があると、クレアチンキナーゼが血液中に出現して高値となり、なかでも代表的な筋肉の病気である急性心筋梗塞こうそく、筋ジストロフィー症では著しく上昇します。

 急性心筋梗塞では図①のように発作後4~5時間から上昇し始め、20~24時間後にピークとなったのち、4~5日で基準値に戻ります。一方、筋ジストロフィー症では筋肉が持続的に傷害されているため高値が続きます。

CK-MBアイソザイムは急性心筋梗塞の特異的指標

 アイソザイムとは、同じ働きをするが分子構造が異なる酵素群のことで、クレアチンキナーゼの場合、さらに分析すると、おもにCK-BB、CK-MB、CK-MMの3つに分けられます。これらのどのアイソザイムが上昇しているかで異常のある臓器などがある程度わかります。

 クレアチンキナーゼのアイソザイム(図②)のうちCK-MBは、とくに心臓の筋肉に多く含まれるため、CK-MBが上昇しているときは急性心筋梗塞心筋炎など心筋傷害によるクレアチンキナーゼの上昇と考えます。

■図② 各種臓器のCKアイソザイムの局在


原因不明の場合は甲状腺疾患を疑う

 筋肉の病気が特定できない場合には、甲状腺の病気も考えられます。甲状腺機能低下症では高値、甲状腺機能亢進症では低値になります。

男性は女性より高値

 基質(クレアチンリン酸)と酵素の入った試薬と比色計を用いて測定し、アイソザイムも同時に分析します。クレアチンキナーゼは筋肉の量と関係するため、男性は女性と比較して10~15%高値になります。

 また、筋肉運動をすると筋肉からクレアチンキナーゼが血液中に漏れ出て上昇し、24時間前後でピークとなり、3~4日後にもとに戻ります。検査を受けるときは、4日前頃から激しい運動は控えてください。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

高値のときは再検査

 基準値を超えていたら、検査前の筋肉運動の有無を確認して、7~10日後に再検査する必要があります。また、アイソザイム分析によってCK-MB の上昇が認められたときは、心筋障害を中心とした精密検査が必要です。

疑われるおもな病気などは

◆高値→急性心筋梗塞、心筋炎、筋ジストロフィー症、多発性筋炎(皮膚筋炎)、甲状腺機能低下症、悪性高熱症など

◆低値→甲状腺機能亢進症、長期臥床がしょう、妊娠など

医師が使う一般用語
「シーケイ」=creatine kinaseの略CKから。その他、 旧名のcreatine phosphokinase(クレアチンフォスフォキナーゼ)の略CPKから「シーピーケイ」

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレアチンキナーゼ」の意味・わかりやすい解説

クレアチンキナーゼ
くれあちんきなーぜ
creatine kinase

クレアチンリン酸の分解と合成にかかわる触媒酵素。骨格筋や心筋および脳などの神経細胞に多く存在する。CKと略称され、かつてはクレアチンフォスフォキナーゼ(CPK:creatine phosphokinase)とよばれていた。筋肉を使うときなどに必要となるATP(アデノシン三リン酸)のエネルギーをクレアチンに転移してクレアチンリン酸(フォスフォクレアチン)として蓄えておき、筋肉を収縮させるなどエネルギーを必要とするときに、逆反応によってATPを合成し再生する。具体的には、クレアチンリン酸をクレアチンとリン酸に分解し、ADP(アデノシン二リン酸)にリン酸基を渡してATPを補給する。すなわちCKは、クレアチン+ATPとクレアチンリン酸+ADPとの相互の反応を触媒する酵素である。

 また、筋肉などの組織細胞に障害があるとCKの血中濃度が高値を示すため、心筋梗塞(こうそく)をはじめとする心疾患のほか、多発性筋炎や甲状腺(せん)機能低下症などの診断の際に測定される。ほかにマラソンなどの激しい運動や、筋肉の打撲、筋肉注射後にもCKが高値を示す場合がある。また、スタチンなどの薬物作用によって上昇をみることもある。

[編集部 2016年7月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレアチンキナーゼ」の意味・わかりやすい解説

クレアチンキナーゼ
creatine kinase

酵素番号 2.7.3.2。クレアチンホスフォキナーゼ (CPK) ともいう。筋肉内に存在する酵素で,血清クレアチンキナーゼ濃度の測定は,筋肉や脳などの組織細胞に障害があるかどうかを判定するうえで役立つ。進行性筋ジストロフィーや心筋梗塞では血清クレアチンキナーゼ活性が上昇する。急性心筋梗塞の診断にはクレアチンキナーゼ・アイソザイム (分子構造の異なる酵素群) の MB活性が測定される。

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栄養・生化学辞典 「クレアチンキナーゼ」の解説

クレアチンキナーゼ

 [EC2.7.3.2].クレアチンリン酸化酵素ともいう.クレアチンがATPからリンを受け取ってクレアチンリン酸になる反応を触媒する酵素.ATPのエネルギーをクレアチンリン酸の形で蓄えて,ATPが使われたときの再生に利用される.いわば高エネルギーリン酸結合を一時的に貯蔵する形態といえる.

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