クレゾール(英語表記)cresol

翻訳|cresol

精選版 日本国語大辞典 「クレゾール」の意味・読み・例文・類語

クレゾール

〘名〙 (Kresol) 石炭タール木タールから得られる無色または淡褐色の液体。化学式 C6H4 (CH3)OH 消毒殺菌防腐剤として広く利用されている。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕

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デジタル大辞泉 「クレゾール」の意味・読み・例文・類語

クレゾール(〈ドイツ〉Kresol)

コールタール木タールから得られる、無色または褐色の液体。フェノール類の一。殺菌力があり・消毒・防腐剤に、また合成樹脂の原料などに利用。

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改訂新版 世界大百科事典 「クレゾール」の意味・わかりやすい解説

クレゾール
cresol



フェノールのベンゼン核についている水素原子メチル基で置換した化合物であるメチルフェノールの総称。化学式C6H4(CH3)(OH)。o-,m-,p-の3異性体がある。いずれもフェノール臭をもち,融点はそれぞれ31℃,11.9℃,34.7℃,沸点は191℃,202.7℃,201.9℃。いずれも無色または淡い黄色か茶褐色の油状の液体。非常に酸化されやすく,空気や光にふれるとしだいに暗褐色に変化する。かなり弱い一塩基酸で,たとえばp-クレゾールの酸解離指数pKa(25℃)は10.26であり,フェノール自身よりもやや弱い酸である。水酸化アルカリ水溶液には溶けて,アルカリ金属塩となる。濃硫酸中ではスルホニル化,濃硝酸中ではジニトロ化される。アルコール,エーテルクロロホルムなどにはよく溶けるが,水には約2%しか溶けない。3異性体の殺菌効力は微小な差はあるものの,ほとんど変わらないといってよく,フェノールの約2.5倍の効力がみられる。微生物は菌体タンパク質に変性を受け,生活力を奪われるものと考えられている。栄養型の一般細菌や結核菌には作用するが,ウイルスや芽胞にはあまり効果がない。工業的にはコールタールの分留で3異性体の混合物として得られ,少量のキシレノールとフェノール留分とが混入している。現在ではトルエンの塩素化加水分解法またはトルエンのスルホン化アルカリ融解法による合成が大部分である。実験室では,対応するトルエンスルホン酸C6H4(CH3)(SO3H)のアルカリ融解で得られる。おもな用途は,消毒液,クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂,殺虫剤,塗料,木材防腐剤などであるが,これらの目的には3異性体の混合物のまま使用される。クレゾールは水に溶けにくいので,同量のセッケンと混和して可溶性をもたせ,水に溶かしたものがクレゾールセッケン液リゾールlysolともいう)で,消毒用には1~3%の溶液が用いられる。濃厚な液が皮膚に付着すると知覚の麻痺や炎症を起こす。誤って飲んだ場合,消化器粘膜を腐食して激しい腹痛を起こし,嘔吐,下痢などの消化器症状および頭痛や失神などの神経症状を呈し,死亡にいたることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレゾール」の意味・わかりやすい解説

クレゾール
くれぞーる
cresol

殺菌消毒剤。オルトメタ、パラの3異性体の混合物で、石炭タールから得られるが、現在は石油分解物の蒸留による方法や化学的合成によってつくられる。無色または黄色ないし黄褐色の澄明な液で、フェノールのようなにおいがある。水に溶けにくいのでせっけんと混和し、クレゾールせっけん液として消毒に用いられる。殺菌力はフェノールよりやや強く、毒性はやや弱い。日本薬局方にはクレゾール、クレゾールせっけん液、クレゾール水が収載されている。

[幸保文治]

クレゾールせっけん液

処方はクレゾール500ミリリットル、植物油300ミリリットル、エタノール(エチルアルコール)50ミリリットル、水酸化カリウム63グラム、常水適量を加え、全量を1リットルとする。あらかじめ植物油とエタノールを加温しておき、水酸化カリウムを常水に溶かした液に加え、加熱してけん化しせっけんをつくり、これにクレゾールを加えて製したものである。黄褐色ないし赤褐色の粘性の液で特異なにおいがあり、水、エタノール、グリセリンとよく混ざる。かつては手指の消毒に1~3%の水溶液がよく用いられたが、逆性せっけんなどの、殺菌力が強くにおいのないものが開発されたため、現在はあまり使用されず、伝染病患者の排泄(はいせつ)物の消毒に5~10%液が、また器具の消毒に3~5%液が用いられるにすぎない。なお、この3%水溶液がクレゾール水である。

[幸保文治]

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化学辞典 第2版 「クレゾール」の解説

クレゾール
クレゾール
cresol

methylphenol.C7H8O(108.14).C6H4(CH3)OH.o-,m-,p-クレゾールの3種類の異性体がある.工業的にクレゾールといえばこれらの混合物である.石炭タールの酸性油留分中に存在するが,トルエンからスルホン化-アルカリ融解法あるいはクメン法により合成される.o-およびp-クレゾールは常温で結晶または液体,m-クレゾールは液体で,いずれもフェノール臭をもち,空気中ではしだいに着色してくる.酸性を示し,希アルカリに可溶.エタノール,エーテル,クロロホルムなどとまざる.フェノールより殺菌力は強く,消毒剤として用いられる.[CAS 1319-77-3:o-,m-,p-クレゾール混合物]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレゾール」の意味・わかりやすい解説

クレゾール
cresol

化学式 CH3C6H4OH 。メチルフェノールのこと。 o -,m -,p -の3種の異性体がある。工業的にはこれらの混合物をさす。コールタールの低温乾留の際の 200~220℃の留分中に含まれる。現在は石油のクラッキングで得られる。いずれもフェノール臭をもち,空気中では次第に暗褐色に変る。 (1) o 体 融点 30.9℃,沸点 191℃,比重 1.047 (20℃) 。 (2) m 体 融点 11.5℃,沸点 202.2℃,比重 1.0336 (20℃) 。 (3) p 体 融点 34.8℃,沸点 201.9℃,比重 1.0341 (20℃) 。どれも消毒や防腐剤に,起泡剤として浮遊選鉱に,合成樹脂や有機薬品の合成原料に用いられる。 o 体は硝酸塩,ヒ酸塩の検出試薬に利用される。

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百科事典マイペディア 「クレゾール」の意味・わかりやすい解説

クレゾール

フェノールのベンゼン核の水素原子をメチル基で置換した化合物。別名メチルフェノール,ヒドロキシトルエン。無色〜淡褐色の液体。o‐体(融点31.0℃,沸点190.0℃),m‐体(融点11.9℃,沸点202.7℃),p‐体(融点34.7℃,沸点201.9℃)の3種の異性体がある。いずれも消毒薬様の臭気がある。水にはわずかに溶け,希アルカリ水溶液,有機溶媒に可溶。コールタール成分として得られ,トルエンから合成される。消毒液,防腐剤,合成樹脂原料とされる。殺菌力はフェノールの約4倍。植物油を鹸化してクレゾールに溶かしたものをクレゾールセッケンといい,消毒に用いる。(図)
→関連項目消毒薬防臭剤リゾール

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栄養・生化学辞典 「クレゾール」の解説

クレゾール

 C7H8O (mw108.14).

 消毒,防腐剤,その他化学合成の原料などに使われる.

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世界大百科事典(旧版)内のクレゾールの言及

【殺菌剤】より

…当時,手術はイギリスの陸軍病院で65~90%,市民病院で26~60%の高い死亡率を示し,手術は死と同様に考えられていたが,この処置によって死亡率を大幅に低下させることに成功した。石炭酸と同様に石炭タール製品であるクレゾールは,コッホとその共同研究者により1887年に医療に使われた。クレゾールは近年は特有な臭気や排水規制のため使われなくなった殺菌剤の一つである。…

※「クレゾール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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