ゲートル(英語表記)guêtre[フランス]

精選版 日本国語大辞典 「ゲートル」の意味・読み・例文・類語

ゲートル

〘名〙 (guêtre) ズボンの裾と脛(すね)をおおう脚絆(きゃはん)のようなもの。活動しやすくするためのもので、厚いもめん、ラシャ、革などで作る。日本では、軍隊で多く用いられた、カーキ色ラシャ製の細い帯で、足に巻きつけて用いる巻脚絆をさすことが多い。
※都新聞‐明治三七年(1904)二月六日「行膝(ゲートル)編上靴に鳥打帽子身装も軽々と打扮ちたまふて」
[語誌]幕末に輸入されたフランスの軍用語の一つ。陸軍の用語としては「巻脚絆」であったが、一般的な語として広く用いられた。

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デジタル大辞泉 「ゲートル」の意味・読み・例文・類語

ゲートル(〈フランス〉guêtre)

革・ズック・ラシャなどで作った洋風の脚絆きゃはん筒状のものや、帯状の巻き脚絆などがある。
[類語]脚絆

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改訂新版 世界大百科事典 「ゲートル」の意味・わかりやすい解説

ゲートル
guêtre[フランス]

歩行を楽にするため,ズボンの裾を押さえ込み,足の甲から下脚部をひと続きにおおう西洋式の脚絆(きやはん)のこと。材質は厚手の布地や皮革で,丈は膝下が多いが,ナポレオン時代のものは股に達するものもある。脇をボタン,留金具,紐などで留め,下端に靴底を潜らせる革ベルトがつく。この形式レギンズロングスパッツともいう。多く軍服用として用いられたが,19~20世紀初めには一般にも着用され,甲を被う程度の短いスパッツが流行した。日本ではフランス式を伝習した幕府陸軍で最初に用い,明治の陸海軍は下士官兵用に白ズック製,士官用に黒ラシャおよび革製のものを定めていた。

小幅の長い布を足首から膝下まで巻き上げ,端につけた紐で結び留めるもので,しめ方が手加減でき脚に密着し,行軍のときにぐあいがよい。19世紀末,インド滞在のイギリス軍から始まり,日本陸軍は日露戦争中の1904年,編上靴(あみあげぐつ)の使用に伴って巻ゲートルを採用した。軍用語では巻脚絆という。一般にも普及し,労務者,警防団,教練学生等の必需品となり,太平洋戦争後半期には通勤通学に男子は皆これをつけ,ゲートルといえば巻ゲートルをさすようになったが,敗戦とともになくなった。色はカーキ色,国防色,濃紺,黒で,布地はラシャその他のウール,綾木綿などであった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲートル」の意味・わかりやすい解説

ゲートル
げーとる
guêtre フランス語

西洋式の巻脚絆(まききゃはん)のこと。陸軍軍人が用いたものであるが、のちには青年団、登山家、土工などの作業場の監督者などが脚絆のかわりに用いた。その理由は、巻き方によって脚絆より自由で便利なためである。また、昭和初期、軍事教練が中学や大学で行われるようになって普及し、満州事変(1931~32)後は一般家庭にも普及、男子の生活必需品となった。ゲートルは黒木綿、紺木綿あるいはカーキ色の帯状の長い羅紗(らしゃ)製品で、一端を三角に折って留め、その頂点に同色の平紐(ひも)をつけて、脚の下部から巻いていき、膝(ひざ)関節の近くで平紐を2、3回巻いて、ずり落ちないように留めるのである。戦後は、一般大衆の間でもほとんど利用されていない。

[遠藤 武]

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百科事典マイペディア 「ゲートル」の意味・わかりやすい解説

ゲートル

脚絆(きゃはん)に似た脚をおおう服装品。ゲートルはフランス語。ズボンの上または直接脚に付ける。横でボタンがけにし,足の甲布からひもを土踏まずへかけて安定させる形と,細長い布を足首からすねへ巻き上げ,膝下でひもで結び留める巻きゲートルとがある。日本では後者が日露戦争時に採用され,第2次大戦中も軍装だけでなく一般男性にも用いられた。生地は厚手木綿,毛織物,皮革など。屋外労働,登山などにも用いられた。
→関連項目スパッツ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲートル」の意味・わかりやすい解説

ゲートル
gaiter

すね当て形式の脚部を保護するものの総称。テープ状の長い布を巻きつけていく中世の十字脚絆や近代の巻脚絆形式と,脇でホックやボタン,バックルなどで留める筒状脚絆形式などがあり,筒状の短いものはスパッツ spatsともいう。素材には木綿,麻,ラシャ,ズック,皮革などがある。ゲートルの名はフランス語 guêtreに由来し,フランス式を取入れた初期の日本の軍装から普及したもの。 (→脚絆 )  

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