コブラ(ヘビ)(読み)こぶら(英語表記)cobra

翻訳|cobra

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コブラ(ヘビ)」の意味・わかりやすい解説

コブラ(ヘビ)
こぶら
cobra

爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目コブラ科コブラ属に含まれるヘビ総称。この属Najaの仲間は、頸部(けいぶ)の目玉模様と「コブラ踊り」で知られる毒ヘビである。また、広義にはアマガサヘビサンゴヘビタイガースネークなどコブラ科に属する陸生のヘビも含まれる。とくにオーストラリアに分布するヘビでは陸生の70%がコブラ科の毒ヘビである。

 コブラ属はインドコブラN. najaをはじめ典型的なコブラ6種を含み、中央アジア、南アジアおよびサハラ砂漠を除くアフリカ全域に分布する。全長1.5~2メートル、普通の状態では形態的に無毒ヘビと大差ないが、危険を感じたりして興奮すると、体の前半部を立ち上がらせ頸部を広げる特有の威嚇姿勢をとる。頸部は肋骨(ろっこつ)が長くなっており、これを張り出して皮膚を広げるが、フード(頭巾(ずきん))とよばれるこの部分はインドコブラがとくに幅広い。中央アジアから南アジアに広く分布し、多くの地方型があるインドコブラのフードの背面には、変化に富んだ目玉模様や眼鏡模様があり、メガネヘビ別名もある。興奮が高まると姿勢を反らせ、シューッと息で音をたてながら飛びかかるしぐさを繰り返す。最初は口を閉じたままの威嚇行動にすぎないが、身に危険を感じるとかみつく。コブラは強い神経毒の持ち主ですべて致命的な危険種であり、夜に行動するため、踏みつけたりして被害にあう人が多い。インドコブラは深い森林から開けた水田地帯まで分布し、昼間は地面の穴に隠れているが、夜には市街地の公園、道路、人家の庭先にも現れる。卵生で一度に20~40個ほどを産み、餌(えさ)は主としてネズミ類である。アフリカ産のエジプトコブラN. hajeケープコブラN. niveaクロクビコブラN. nigricollisなどは体の前半部を高く立ち上がらせるが、頸部の幅は狭い。近縁で別属のリンカルスHemachatus haemachatusは、クロクビコブラとともに毒牙(どくが)(溝牙(こうが))の構造がすこし異なる毒吐きコブラspitting cobraであり、危険が迫ると、敵の目をねらって毒を飛ばす。毒は正確に発射され、数メートル離れても効率よく敵に被害を与える。コブラ属の近似種には全長が最大5.5メートルに達する世界最大の毒ヘビであるキングコブラOphiophagus hannahや、アフリカ中部に分布しもっぱら魚を餌とするミズコブラBoulengerina annulataなどがある。

 コブラはその威嚇行動の習性を利用した「コブラ踊り」の街頭ショーで知られる。もちろんこれは、聴覚の鈍いヘビが笛にあわせて踊るのではなく、コブラを暗い容器から明るいところに急に出すことと、笛の動きとによって興奮させるためである。コブラやキングコブラは古来信仰の対象とされ、とくに東南アジアでは安産の神として各地で祀(まつ)られている。

[松井孝爾]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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