コマクサ(読み)こまくさ

改訂新版 世界大百科事典 「コマクサ」の意味・わかりやすい解説

コマクサ (駒草)
Dicentra peregrina(Rudolphi) Makino

日本の高山植物の代表的なものとして知られるケシ科の多年草。7~8月ころ,先が垂れた花茎に紅紫色の可憐な花が下垂して咲く。シベリア東部,カムチャツカサハリン千島から本州中部まで分布し,きわめて陽地性で,高山の砂礫地(されきち)などに生える。全体に小型で,草丈は約10cm。葉は白みをおび,細かく裂けて根生する。短い根茎には葉の基部や鱗片が多肉化してつき,貯蔵物質を蓄える。花は扁平で2枚の萼片,4枚の花弁があり,外側の2枚の花弁は袋状で先が反り返る。おしべは4本だが,内側の2本が分裂して6本のように見える。花の形を馬の顔に見たてて,〈駒草〉と名づけられた。果実は細い楕円形で枯れた花冠に包まれ,風で散布され,やがて黒色の微細な種子を多数出す。子葉は1枚で,双子葉植物の中では例外的である。全草にディセントリン,プロトピンなどのアルカロイドを含み有毒。薬草として民間で用いられたことがある。また,山草として栽培されることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマクサ」の意味・わかりやすい解説

コマクサ
こまくさ / 駒草
[学] Dicentra peregrina (Rudolph) Makino

ケシ科(APG分類:ケシ科)の高山植物。高さ5~15センチメートル。全草は粉白色を帯びた緑色。葉は無毛で細かく切れ込む。7~8月、5~10センチメートルの花茎を出し、数個の桃色の花をつける。萼片(がくへん)は2枚、花弁は4枚。外側の2枚の下部は袋状、内側の2枚は上端でくっつく。雄しべは6本、雌しべは1本。蒴果(さくか)は長楕円(ちょうだえん)形、中に黒い小さな種子がある。花の形が馬の頭に似ているところから駒草の名がある。アルカロイドを含み、木曽(きそ)地方では古くから薬草として利用されてきた。北海道、本州中北部の高山に生育し、樺太(からふと)(サハリン)、千島、カムチャツカ、シベリア東部にまで分布する。コマクサ属には8種があり、東アジア、北アメリカに分布する。

[寺林 進 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「コマクサ」の意味・わかりやすい解説

コマクサ

北海道,本州北中部の高山帯の砂礫(されき)地にはえ,千島,カムチャツカにも分布するケシ科の多年草。葉は根生して3出状に細かく裂け,粉緑色を帯びる。夏,葉間から高さ10cm内外の先がたれた花茎を出し,上端に淡紅紫色を帯びた長さ約2cmの花を数個下垂する。花弁は4枚,外側の2枚は基部がふくれ,上半がそり返る。花の形をウマの顔に見たてて駒草といわれる。近縁に観賞用に栽培されるケマンソウがある。
→関連項目高山植物

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