コリンエステラーゼ(ChE)

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 の解説

コリンエステラーゼ(ChE)

基準値

200~450U/ℓ(JSCC勧告法)

コリンエステラーゼ(ChE)とは

 コリンエステルと呼ばれる物質を加水分解する酵素で、肝細胞合成される。


肝硬変になるとコリンエステラーゼをつくることができなくなり減少

肝臓腎臓甲状腺などの異常を調べる検査です。低値のときは肝臓病の終末像、肝硬変が強く疑われます。

肝硬変で低値に

 コリンエステラーゼ(ChE)は、肝細胞で合成されて血液中に分泌される酵素で、肝硬変を調べる検査のひとつです。

 肝硬変は、肝臓全体の変化の終末期で、肝細胞が破壊されつくして肝臓が硬くなり(線維化)、肝細胞が働かなくなってコリンエステラーゼがつくられなくなり、血液中の値は低くなってしまいます。

 コリンエステラーゼをはじめとして蛋白質アルブミン(→参照)、コレステロール血液凝固因子(→参照)など、肝細胞でつくられている物質を調べて、これらが低値になっていれば肝臓の働き(合成能力)がかなり低下している状態(肝硬変の状態)の証しになります。

 その他、劇症肝炎でも低下し、日ごとに低下が強くなる特徴があります。慢性肝炎では、軽度の低下となります。

ネフローゼ症候群では高値に

 コリンエステラーゼは脂質代謝と関連しているため、栄養のとり過ぎや肥満高値になります。

 ネフローゼ症候群では、血液中のアルブミンが低下し、尿蛋白(→参照)が陽性になり、脂質代謝の異常のためにコリンエステラーゼは上昇します。

 また、甲状腺ホルモン(→参照)は、コリンエステラーゼの合成を亢進させる働きがあるため、血液中のこのホルモンが高値になる甲状腺機能亢進症ではコリンエステラーゼも上昇します。

有機リン剤中毒では異常に低下

 コリンエステラーゼは有機リン剤中毒では異常に低下します。この代表である農薬サリンは、コリンエステラーゼに作用して活性を阻害するためです。

 また、先天的にコリンエステラーゼ活性が低値、あるいは欠損している人がいます。このような人は、手術時に使用する筋弛緩薬であるサクシニルコリンが分解されず、無呼吸状態が持続しますので注意が必要です。

診断上は低値のときが重要

 血清を用いて、自動分析器で測定します。測定法により基準値が異なります。日内変動や運動の影響はありません。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

 コリンエステラーゼの異常としては、低値のときが重要で、肝細胞での合成能力が低下していることを反映しています。

 肝臓病であれば、肝硬変が進行している状態で、肝硬変に関する種々の血液検査や腹部超音波(→参照)、腹部CT(→参照)などの精密検査が必要です。肝硬変では、コリンエステラーゼが正常に回復する望みはありません。

 また、消耗性疾患(悪性腫瘍末期、低栄養)でも低値になるため、これらの鑑別、確定診断のための検査も重要になります。

疑われるおもな病気などは

◆高値→脂肪肝(過栄養性、アルコール性)、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症など

◆低値→肝疾患:肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎、肝臓がんなど

    その他:有機リン剤中毒(農薬、サリンなど)、悪性腫瘍による悪液質、低栄養、先天性ChE異常症など

医師が使う一般用語
「コリンエステラーゼ」「シーエッチイー」=cholinesterase(コリンエステラーゼ)およびその略ChEから

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

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