コルメラ(英語表記)Lucius Junius Moderatus Columella

精選版 日本国語大辞典 「コルメラ」の意味・読み・例文・類語

コルメラ

(Columella) 一世紀中頃のラテン作家。スペインに生まれる。農耕果樹牧畜養蜂造園などについて論じた「農業論」で有名。ほかに「植樹論」。生没年未詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「コルメラ」の意味・わかりやすい解説

コルメラ
Lucius Junius Moderatus Columella

1世紀のローマ帝政期に《農業論》全12巻を著した作家。生没年不詳。スペインの,おそらくガデス(現,カディス)の生れで,軍団副官として小アジアやシリアに赴き,のちにイタリアに定住した。若いころから伯父の影響を受けて農業に親しみ,イタリアでは各地に土地を所有していた。《農業論》の執筆にあたっては大カトーウァロ,ケルススらローマの先駆者はもとより,クセノフォンも参考にしたが,自己の経験に基づく独自の見解を随所に盛り込んでいる。主題は一般農耕,果樹栽培,牧畜,家畜養魚,養蜂,造園,農場経営,酒造に及び,10巻の造園術だけはウェルギリウスの《農耕詩》にならって六脚律の詩形で書いた。記述方法,表現力ともに洗練度が高く,古代ローマの優れた専門書の一つに数えられる。コルメラは大カトー同様,農業を人間の誠実な営利活動として高く評価した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コルメラ」の意味・わかりやすい解説

コルメラ
Columella, Lucius Junius Moderatus

1世紀のローマの作家。スペインのカディス出身。『農事論』De re rustica(12巻)の著者。これは農民の生活と仕事のさまざまな面を扱った論文で,農場と耕作作物ブドウ樹木,家畜,家禽,魚,野獣蜜蜂,庭園,荘園管理人夫婦の義務など多くの項目に分かれ,特に庭園に関する第10巻だけは,ウェルギリウスの『農耕詩』の継承の意味で,叙事詩韻律で書かれている。コルメラは実践的な,また科学的な農民として,ローマ農業の復活を願望し,外国穀物の輸入増加と田園の大邸宅と不在地主制度を嘆き,地主本人の直接管理を提言,ウェルギリウスを賛嘆した。

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世界大百科事典(旧版)内のコルメラの言及

【農書】より

…次の時代のローマの農書は多く残っている。ウァロ,大カトー,コルメラ,とくにコルメラの農書は,その中でも最も完備したものである。これらは,いずれも二圃式農法を記述している。…

【ラテン文学】より

…ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。…

※「コルメラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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