コロルム(英語表記)Colorum

改訂新版 世界大百科事典 「コロルム」の意味・わかりやすい解説

コロルム
Colorum

フィリピンで,おもに1920-30年代に発生した千年王国主義的な社会運動に対して,外部者が付した名称。この語の起源は,19世紀初期にデ・ラ・クルスが結成したサン・ホセ信徒団の別称に遡る。しかし20世紀のコロルム運動とサン・ホセ信徒団の間に直接のつながりはない。1920,30年代には,ミンダナオ島のスリガオ地方からビサヤ諸島,ルソン島諸州にいたるフィリピン各地で,コロルムの反乱が続発した。これら諸コロルム間には組織的連携はなかったが,以下のようないくつかの共通した性格がみられた。(1)参加者は都市および農村の貧民層であった。(2)貧困,不正,差別といった現実生活の苦しみからの抜本的救済を主張した。(3)千年王国主義の宗教的熱狂性とメシア思想をもっていた。(4)カトリック教会から〈異端の徒〉〈迷信の徒〉とさげすまれながら,独自の信仰を堅持した。以上のような特徴をもつ組織や運動を,フィリピンでは従来,とくに権力の側から,コロルムと蔑称したのである。したがってコロルムは,1920,30年代以外の時期にも散見されるが,とくにこの時期に集中している理由は,アメリカ植民地体制下に入って,都市の労働者や農村の小作・貧農層が窮乏の度を深めたにもかかわらず,近代的な労働運動農民運動未発達だったことによる。今日,この語は拡大使用され,あらゆる無許可所有物無免許事業を表す言葉として用いられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコロルムの言及

【デ・ラ・クルス】より

…〈サン・ホセ信徒団の反乱〉と呼ばれるこの蜂起は,フィリピンのフォーク・カトリシズムの文脈で構築された反植民地闘争の典型であった。信徒団員が祈りの最後に唱和したラテン語の文句〈終りなき世界をper omnia saecula saeculorum〉から,部外者はこの信徒団を別称コロルムと呼んだ。【池端 雪浦】。…

※「コロルム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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