ゴヤ(堀田善衛の評伝)(読み)ごや

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴヤ(堀田善衛の評伝)」の意味・わかりやすい解説

ゴヤ(堀田善衛の評伝)
ごや

堀田善衛(よしえ)の評伝。四部作として1973年(昭和48)から76年にかけ『朝日ジャーナル』に各年8、9か月ずつ連載し、それぞれ次の年単行本として新潮社刊。懸案主題を、数度のスペイン滞在を経て書き上げた作者執念の作である。下層の生まれながら巧妙な処世法でいちずに首席宮廷画家を目ざしたゴヤは、目的を達すると、なぜか宮廷画家らしからざる画業に出精する。また、子供の清純を至極の業に描く一方で、女性の肌のぬめりをもののみごとに表現する。と思うと、人間と社会との底なしの闇黒(あんこく)を嗜虐(しぎゃく)的なまでにとらえきる――。スペイン中世末の激動のなかで近代を先駆した、謎(なぞ)と矛盾の存在ゴヤを活写する力作である。

[佐々木充]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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