ゴーラル(読み)ごーらる(英語表記)goral

翻訳|goral

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴーラル」の意味・わかりやすい解説

ゴーラル
ごーらる
goral

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科ゴーラル属に含まれる動物の総称。この属Nemorには3種がある。ミャンマー(ビルマ)とカシミール北部から中国東北部の山岳地帯を経て、朝鮮半島、シベリア東部シホテ・アリニ山脈まで分布するのがヒマラヤゴーラルN. goral、別名ハイイロゴーラルまたはチョウセンカモシカで、山岳地帯の生活に適し足が長く頑丈である。肩高55~76センチメートル、体重25~35キログラム、雌雄ともに短い角(つの)がある。体色は灰色か灰褐色で厚い毛をもち、背の正中線に黒線が、のどには白い斑紋(はんもん)がある。日本のカモシカに似るが眼下腺(せん)がない。標高1000~2500メートルの乾燥した急斜地に小さな群れをつくり、朝と夕に活動、採食する。カッショクゴーラルN. daileyiは、チベット南東部のブラマプトラ川上流の乾燥地帯からタイプ標本の1頭が知られるだけの珍獣で、体毛は短く褐色で胸とのどに白い斑紋がある。体形はヒマラヤゴーラルと同じである。アカゴーラルN. cranbrookiはミャンマーとアッサム北部の山岳地帯に生息する。体は他の2種より小さい。体色はきつね色した赤色で、長くて厚い体毛をもつ。のどや胸に斑紋はない。ヒマラヤゴーラルよりも高い所に生息し、夏の間は森林限界より上部の標高3600メートルあたりに分布し、2400メートル以下には下らない。ゴーラルの仲間は11月前半に交尾妊娠期間は6か月で、翌年5、6月ごろ1子を出産する。

[北原正宣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ゴーラル」の意味・わかりやすい解説

ゴーラル
goral
Nemorhaedus goral

山地岩場にすむ野生ヤギ類の1種。岩場での跳躍に適した,しっかりした四肢と短い角をもつ。偶蹄目ウシ科の哺乳類。毛は長く,密生し,黄灰色から暗褐色。角は雌雄ともあり,後方に湾曲する。体長95~130cm,尾長10~45cm,体重25~30kg。シベリア南東部からミャンマー,タイ,ヒマラヤ地方の標高1000~4000mの山地に生息する。4~8頭の小さな群れをつくってくらし,おもに早朝と夕方に山腹草地や森で,草,木の葉,小枝,実などを食べ,日中は日当りのよい岩場で休む。体色が背後の岩の色とまぎらわしく,姿を見つけるのは容易ではない。何かに驚くと,シューと聞こえる警戒声を上げ,それを聞いた仲間が同じ声を繰り返す。交尾期はシベリアで9月の末から11月,雌は妊娠期間6~8ヵ月で,1産1~2子を生む。スポーツとしての狩猟の対象とされたため数が著しく減少し,絶滅の危険もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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