サギソウ(英語表記)Habenaria radiata Spreng.

改訂新版 世界大百科事典 「サギソウ」の意味・わかりやすい解説

サギソウ
Habenaria radiata Spreng.

サギを連想させる白色の清楚(せいそ)な花を盛夏につける小型のラン科植物。低山の湿地に自生するが,栽培されることが多い。地下に球形の塊根があり,それで越冬する。茎は直立し,高さ20~40cm,基部近くに普通,葉を3~5枚つける。葉は広線形で長さ5~10cm。上部の葉は小さく,鱗片状になる。7~8月,茎の先に花を1~3個つける。花は径約3cm。萼片緑色で小さい。花弁は白色,上向きに立つ。唇弁も白色,3深裂し,側裂片がフリル状に中裂し目だつ。長さ4cmほどの比較的長い距がある。本州,四国,九州の湿地にはえる。観賞用によく栽培され,多くの自生地が乱獲のため消失した。また,宅地造成などで生育地そのものが破壊された例も多い。

 サギソウの属するミズトンボ属Habenaria(英名fringed orchis)は球形の塊根,裸出した粘着体,左右に分かれた柱頭などで特徴づけられ,熱帯を中心に約500種ほどが報告されている。日本には10種ほどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サギソウ」の意味・わかりやすい解説

サギソウ
さぎそう / 鷺草
[学] Pecteilis radiata (Thunb.) Raf.
Habenaria radiata (Thunb.) Spreng.

ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。地中に球根をつくって冬を越し、春に発芽する。葉は細く、茎を抱くようにして5~7枚互生する。7~8月、花茎を20~30センチメートルに伸ばし、径約3センチメートルの花を2、3個開く。萼片(がくへん)3枚は緑色で小さいが、花弁3枚は白色で目だつ。ことに唇弁は大形で周辺が細かく裂け、後方には長い距(きょ)がある。この花形がサギの飛び立つ姿にみえるとして、サギソウの名がついた。日当りのよい湿原草間に生え、群生することもある。東北地方南部から九州、台湾、中国東部に分布する。

 園芸品種としては、葉に白や黄の覆輪斑(ふ)の入るものが栽培される。浅い植木鉢に植え、毎年発芽前に上質のミズゴケに植え替え、棚上に置いて十分日に当てる。水は朝夕かけ流し、薄い水肥をときどき与えるとよい。

[鳥居恒夫 2019年5月21日]


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百科事典マイペディア 「サギソウ」の意味・わかりやすい解説

サギソウ

本州〜九州の湿原にはえるラン科の多年草。茎は球茎から直立し,高さ20〜40cm,数枚の線形の葉をつける。花は夏,茎頂に1〜3個つき,白色で径約3cm。3枚の緑色の萼片と3枚の花弁がある。唇(しん)弁は大きく,3裂し,側裂片はさらに深く細裂して鳥の翼を思わせる。花がシラサギの飛ぶ姿に似るのでこの名がある。
→関連項目ラン(蘭)

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