サクダル党(読み)サクダルとう

改訂新版 世界大百科事典 「サクダル党」の意味・わかりやすい解説

サクダル党 (サクダルとう)

1930年代にフィリピンで最も急進的な反政府運動を組織した政党。組織者ラモスBenigno Ramos(1893-1945)はブラカン州ブラカン町出身で,州政府吏員,小学校教師などを務めたのち,マニラに出て,タガログ語によるフリーのジャーナリストとして名をなし,1917年初代上院議長ケソンの引きで上院に職を得るとともに,ケソンが催す演説会の弁士として活躍した。しかし30年,マニラの高等学校での学生ストライキを機にケソンと対立,週刊新聞《サクダル》を創刊して独自の政治活動を始めた。〈サクダルsakdal〉は〈抗議〉〈非難〉という意味のタガログ語であるが,同紙はケソンの率いるナショナリスタ党の寡頭政治と,宗主国アメリカに追従した政治を糾弾して,マニラ周辺諸州で多くの支持を得た。33年,政界が独立法をめぐって大混乱に陥ったのを機に,ラモスはサクダル党を結成,34年の総選挙でめざましい進出をした。サクダル党は即時完全独立を主張し,10年間のコモンウェルス期設定に反対したが,この主張は無視される形勢にあったので,35年5月2日,党員はマニラ周辺諸州で大蜂起を決行した。蜂起参加者は6万を数えたが,数十名の死者を出して1日で鎮圧された。この間ラモスは1934年から日本に滞在して日本の国粋主義者と親交を深め,蜂起時には日本から大規模な援助が行われると宣伝していたが,実行されなかった。38年,ラモスはケソンと和解して帰国したが,党員らがこれに反対したので,新たにガナップ党を設立した。日本軍のフィリピン占領時,これら2党の党員の一部は日本軍に積極的に協力した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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