サグラダファミリア教会(読み)サグラダファミリアきょうかい(英語表記)Sagrada Familia

改訂新版 世界大百科事典 「サグラダファミリア教会」の意味・わかりやすい解説

サグラダ・ファミリア教会 (サグラダファミリアきょうかい)
Sagrada Familia

世紀末の建築家ガウディがスペイン・カタルニャのバルセロナに残した未完大作。〈聖家族(サグラダ・ファミリア)〉にささげる贖罪教会として1882年ネオ・ゴシック様式で着工翌年から彼が工事監督者となり,死去するまでの43年間設計施工にあたった。生前に完成したのは地下祭室(クリプタ)と東側の〈キリスト降誕のファサード〉のみだが,彼はマケットという形で全構想を残した。石に刻まれた聖書,もしくは建築と美術を総動員したカトリック信仰の総合的表現というのが彼の構想だが,このカトリック的象徴主義が,放物線双曲面を駆使した独創的で合理的な構造と混然一体となっている。建設工事は続行中で,完成すると95m×45mの5廊式ラテン十字プランの上に,170mの塔を中心に18本の塔が林立する,おそらく人類史上最も象徴主義的な大聖堂建築となるはずである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のサグラダファミリア教会の言及

【ガウディ】より

…ゴシック建築の合理性の発展,カタルニャ独自の建築技術の適用,イスラム風の装飾性などの諸要素を彼独自の詩想のなかで融合し,バルセロナおよびその周辺,さらにアストルガ,レオンなどにもその建築を残している。とりわけ,当時のカタルニャの代表的な実業家グエル侯爵との交友のもとに建築した《フィンカ・グエル》(1864‐87),《グエル邸》(1886‐89),《グエル公園》(1900‐14),《コロニア・グエルの地下聖堂》(1908‐16)のほか,《カサ・ミラ》(1906‐10)や現在でも建築続行中の聖家族贖罪教会(サグラダ・ファミリア教会,1883‐)が名高い。彼の作品は,機能主義建築全盛の風潮のなかで,長く無視もしくは異端視されたが,今日では,その独自な構造の合理性,アール・ヌーボーの先駆的地位,環境との適応,象徴性など,さまざまな点で再評価されつつある。…

【スペイン美術】より

…中世スペインのイスラム様式とゴシック様式を出発点としたガウディは,きわめて合理的な構造の上に中世的もしくは原初的な外皮をもつ独創的な建築を創造した。サグラダ・ファミリア教会に代表される合理による非合理の表現,見る者に語りかける建築は,20世紀後半になって世界的に注目を浴びつつある。20世紀のスペイン建築は,内戦(1936‐39)という悲劇的な中断期はあったが,トローハEduardo Torroja(1899‐1961)やセルトJosé Luis Sert(1902‐ )など世界的な技術者や建築家を生み,1960年代以降は,その経済発展とともに,若い建築家たちによって国際的な潮流と軌を一にした個性的な実験が次々と試みられている。…

※「サグラダファミリア教会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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