サルビア(読み)さるびあ

デジタル大辞泉 「サルビア」の意味・読み・例文・類語

サルビア(〈ラテン〉Salvia)

シソ科アキギリ属の多年草総称。約900種が温帯・熱帯に広く分布薬用香辛料・観賞用として栽培される種類もある。 夏》セージ
シソ科の小低木。日本では一年草。夏から秋に、緋色の唇形の花を穂状につける。ブラジルの原産。緋衣草ひごろもそう

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精選版 日本国語大辞典 「サルビア」の意味・読み・例文・類語

サルビア

〘名〙 (salvia)⸨サルビヤ⸩
① シソ科アキノタムラソウ属の草本のうち外国産で美しい花が咲き観賞用に栽培される種類の総称。ヒゴロモソウベニバナサルビア、ソライロサルビアなどで、なかでもヒゴロモソウが最も知られる。《季・夏》 〔舶来語便覧(1912)〕
※桐の花(1913)〈北原白秋〉白き露台・なまけもの「ものおもふわかき男の息づかひそなたも知るやさるひあの花」
③ 植物「やくようサルビア(薬用━)」の異名。〔中外新聞‐慶応四年(1868)四月二七日〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルビア」の意味・わかりやすい解説

サルビア
さるびあ
[学] Salvia

シソ科(APG分類:シソ科)サルビア属(アキギリ属)の総称で、低木性の多年草。中南米、ヨーロッパの地中海沿岸原産で世界に約900種分布する。一般によく栽培されるのはブラジル原産のヒゴロモソウS. splendens Sellowで、夏の花壇によく植えられる。園芸上は春播(ま)き一年草として扱われ、草丈は30~40センチメートルの矮性(わいせい)種から50~70センチメートルの中高性種まである。葉は対生し、広披針(こうひしん)形。夏、分枝した頂部に唇形花を穂状につける。花色は赤色系が多いが、品種改良が進み、緋(ひ)赤、桃、紫、白、朱赤、複色まである。近年の品種には矮性のドレスパレードのシリーズがあり、花色が豊富で、混植花壇に植えられる。ほかにボンファイア、セントジョンズファイアなど緋赤色系の品種もある。

 ケショウサルビアS. farinacea Benth.はニュー・メキシコ原産で、春播き一年草とされる。明るい青紫色の小花が穂状につき、花穂は細いが穂数が多い。近年、矮性のビクトリア種がつくられた。ソライロサルビアS. patens Cav.は、花は淡青色で、花数は多くはないが、珍しい種類である。

 サルビア属にはこのほか、観賞用以外に薬用や香辛料とするセージがある。

[金子勝巳 2021年9月17日]

栽培

繁殖は実生(みしょう)によるが、発芽はあまりよくない。4~5月、播床(まきどこ)に3ミリメートルほどの深さに種を播き、軽く覆土し、発芽するまでは表面が乾かないようにする。発芽後、本葉6~7枚のころ、日当りと排水のよい所に、20~30センチメートル間隔で移植する。元肥を十分に施し、水も十分に与える。夏の花期が終わったら全体を軽く刈り込み、1平方メートル当り50~80グラムの化成肥料追肥として施すと、秋から霜が降りるまで咲き続ける。花壇のほか、プランター植えでテラスやバルコニーなどでもよく栽培される。幼苗期に立枯病にかかったり、ヨトウムシの害を受けやすいので注意を要する。

[金子勝巳 2021年9月17日]

文化史

サルビア属は世界に広く分布するが、園芸種のサルビアはブラジル南部の原産で1822年に発表され、同年にはイギリスに伝わっていた。原地では低木状の多年草であるが、一年草に改良されて温帯での栽培が可能になった。日本へは明治20年代以降に渡来したらしく、明治19年(1886)の小石川植物園の植物目録には、サルビアとしてサルヒヤ(香辛野菜のセージ)、ベニノサルヒヤ(北米産のベニバナサルビア)の2種の名があるだけで、現在のサルビアの名はない。昭和に入って普及し、花壇に欠かせない花となった。

[湯浅浩史 2021年9月17日]

『西川綾子著『サルビア NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月』(2001・日本放送出版協会)』


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改訂新版 世界大百科事典 「サルビア」の意味・わかりやすい解説

サルビア
scarlet sage
Salvia splendens Sello

シソ科アキギリ属Salviaの植物は南・北半球の温帯地方に700種もあり,一・二年草も多年草も含まれているが,一般に最もよく知られているのは,緋紅色の花が美しいこの種である。和名をヒゴロモソウという。原産地はブラジルで,高さ1mをこえる低木状の多年草であるが,改良された園芸種をふくめて,日本では冬の寒さで枯れるから春まき一年草として栽培される。温室では数年枯れずに生育する。茎は方形で直立し,よく分枝して,在来種は短日で花芽分化して10月以降に開花する。花穂の10数節の各節に2~6花をつけるが,花は花冠と同じ緋紅色の萼につつまれた唇形花で,萼の長さの3倍,めしべの柱頭は上唇弁の先に露出する。種子は宿存萼の中に4個できるが,熟せばこぼれ落ちる。改良種には高性,矮性(わいせい),早咲種など多くの系統があり,花色も緋紅・紫・白・淡紅色など品種が多い。

 播種(はしゆ)はふつう4月中旬,発芽には20~25℃を要する。早生種は2~3月にフレームや温室でまき,5~6月に開花させる。いずれも本葉が3~4節出たころに小鉢にあげ,逐次鉢替えするか,花壇に植えつける。開花期が長いので,品種を選んで育苗したものを初夏と初秋に植えれば,降霜期まで咲きつづける。用土はとくに選ぶことはなく,赤玉土2,腐葉土1を混ぜ,これに化成肥料などを使用する。

 アキギリ属で観賞用に栽培されることの多い種には,次のようなものがある。ベニバナサルビア(サルビア・コクキネア)S.coccinea L.(英名Texas sage)は,南・北アメリカ,メキシコの原産で,高さ30~60cm,葉も茎もやや小型で,花穂の1節に深紅色の3~4花をつけるが,午後には花が脱落する。サルビア・ファリナセアS.farinacea Benth.は,北アメリカ・テキサス原産の多年草で,葉は長披針形。草丈60cm,花穂は長く紫青色の唇形花をつけるが,上唇弁は小さく,下唇弁だけが大きい。ムラサキサルビア(サルビア・ホルミヌム)S.horminumL.は,南ヨーロッパ原産の一年草で,花穂の先に紫や桃色に着色した小葉をつけて美しい。日本にはアキギリアキノタムラソウなど9種ほどが分布しており,花が美しいので山草として栽植されるものがある。

 なおセージは薬用に栽培されるアキギリ属の多年草で,サルビアと同様にラテン語salvus(〈安全な,健康な〉の意)を語源とする。西洋では古くから長命や記憶力強化の霊草と信じられ,家庭の健康薬に用いられた。
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百科事典マイペディア 「サルビア」の意味・わかりやすい解説

サルビア

シソ科の一属で,一般には薬用にするセージ,または観賞用に栽培される数種をさす。最も普通に花壇植にされているサルビア・スプレンデンス(和名ヒゴロモソウ)は原産地のブラジルでは低木状多年草だが,日本では春まきの一年草として扱われている。高さ50〜80cmで,鋸歯(きょし)のある卵形の葉を対生。夏〜秋,茎頂に長い穂状に花をつける。萼(がく)とともに朱紅色をした花冠は先が唇形(しんけい)になった筒状。矮(わい)性〜高性のほか,花色も紫・桃・白色の品種がある。サルビア・パテンス(和名ソライロサルビア)は青色の花が咲くメキシコ原産の多年草で,冬は温室内で保護する。サルビア・ホルミナム(和名ムラサキサルビア)は南欧原産の一年草で,花は紫色。サルビア・コクシネア(和名ベニバナサルビア)は北米南部から熱帯アメリカ原産の多年草で,花は深紅色。サルビア・ファリナセア(和名ブルーサルビア)は北米のテキサス原産の多年草で,花は粉白を帯びた紫青色である。
→関連項目合弁花

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サルビア」の意味・わかりやすい解説

サルビア
Salvia splendens; scarlet sage

サルビアは本来はシソ科アキギリ属の属名で,この属の植物は新旧両大陸の温帯から熱帯に 600種も知られる。赤,紫,白,黄などのやや大きな唇形花を穂状につけ,美しいものが多いので観賞用に栽培される種類もいくつかある。そのうち,通常,単にサルビアの名で呼ばれるのは,ブラジル原産のヒゴロモソウ (緋衣草) S. splendensで日本には明治中期に輸入され,最も普通に花壇に栽植される草花の一つとなった。草丈は 60~80cmとなり,茎は四角柱で,鈍鋸歯のあるシソに似た卵形濃緑色の葉が,長柄によって対生する。夏,枝先に総状花序を出し,霜のおりる頃まで緋紅色の花を次々と横または下向きにつける。萼は硬く鐘状で先が5つに裂け,濃い緋赤色で花冠の落下後も残る。花冠は長い筒状で長さ 3cmぐらいあり,上下2唇は前方に伸びる。このほか全体に小型なベニバナサルビアや,青色花をつけるソライロサルビアも観賞用に栽培される。

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