サワラ(海水魚)(読み)さわら(英語表記)Japanese Spanish mackerel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サワラ(海水魚)」の意味・わかりやすい解説

サワラ(海水魚)
さわら / 鰆
Japanese Spanish mackerel
[学] Scomberomorus niphonius

硬骨魚綱スズキ目サバ科に属する海水魚。広義には本種を含むサワラ属全体、あるいはカマスサワラ、ニジョウサバをも含めたサワラ族を意味する。このうちサワラ属はもっとも大きなグループで、世界の海洋から多数の種が記載されており、現在までに少なくとも18種が独立種と考えられている。日本近海からは5種が知られているが、サワラが産業上の最重要種である。本種は沖縄以北の日本各地の沿岸ならびに黄海沿海州にかけて分布し、とくに瀬戸内海に多い。体は細長く側扁(そくへん)し、サワラ型のスマートな体形を有する。体表は微小な鱗(うろこ)で覆われ、体側には多数の暗色斑点(はんてん)が7、8列に縦走する。側線は波状で著しく曲がり、これと直角に繊細な脈枝が多数出ている特徴によって他種と容易に識別できる。全長1メートル。群生し、通常は表層に生息するが、冬季には深みに移動するほか、水平的にもかなり移動するようである。5~7月ごろ内湾に来遊して産卵する。卵径1.5~1.9ミリメートルの球形分離浮性卵で、サバ科のなかでは最大級の卵を産む。孵化(ふか)直後の仔魚(しぎょ)は全長3.8~4.3ミリメートルで、稚魚期の成長はきわめて速く、1日平均2.0~3.6ミリメートルに達する。若魚はサゴシとよばれる。魚食性で小形魚を貪食(どんしょく)する。日本各地で引縄、手釣り、刺網巻網定置網などさまざまな漁法でとられるが、主漁期は春季にある。

 近縁種のヨコシマサワラScomberomorus commersonは、サワラによく似ているが、側線が第2背びれの後端部下方で急激に下方に曲がること、鰓耙(さいは)数が少ないこと、歯の縁辺部が細かい鋸歯(きょし)状を呈することで、ほかのサワラ類と区別できる。体側には多数の暗色横縞(よこじま)があり、全長1.5メートルになる。肉質が白色で脂肪も多く非常に美味であるが、分布の中心は熱帯域にあり、日本での漁獲は少ない。

 ウシサワラS. sinensisは2メートルに達する大形種で、大きい個体では長くとがった吻(ふん)と、頭部背外郭が凹形にくぼむ特徴を有するために識別は容易である。側線は第1背びれ下方で著しく屈曲するが分枝を派生しない。尾びれの後縁は大きな半月形を呈する。生息域がやや沖合いにあることからオキザワラともよばれる。日本における漁獲は少なく、味も先にあげた2種に劣る。このほかの日本産サワラ属として、ヒラサワラS. koreanusとタイワンサワラS. guttatusが知られているが、ともに非常にまれな種類で実証的記録は若狭(わかさ)湾で得られたものに限られている。

[沖山宗雄]

食品

サワラは青背魚であるが肉質は白く、サバ、サンマ、イワシなどの青背魚に比べて脂質含量が少ない。そのため味が淡泊で、くせがなく、料理の幅が広い。主として西日本でとれるので、西日本での利用が多い。大阪では酢じめにした生ずし(きずし)が、サバの生ずしよりも上質のものとして正月の魚に利用されていた。和風料理では塩焼き、照焼きをはじめ、ちり蒸し、てんぷら、魚すきなどに、洋風料理ではムニエル、フライ、グラタンなどにする。卵巣はからすみの原料として用いられることもある。

[河野友美・大滝 緑]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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