サンコウチョウ(読み)さんこうちょう(英語表記)black paradise flycatcher

改訂新版 世界大百科事典 「サンコウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サンコウチョウ (三光鳥)
black paradise flycatcher
Terpsiphone atrocaudata

スズメ目ヒタキ科の鳥。雄は尾が非常に長く,全長45~50cm。頭部と胸は紫黒色で,背は紫がかった赤褐色,腹部は白い。冠羽は短いがよく目だち,眼のまわりにはコバルトブルーのまぶたが裸出している。くちばしは灰青色。雌は雄のように尾が長くなく,全長約18cm。羽色も全体にいくらかじみである。フィリピンのバブヤン諸島から琉球諸島,日本本土にかけて繁殖し,秋・冬季には中国南部,マレー半島スマトラ,フィリピンなどに渡る。日本には夏鳥として4,5月に渡来し,北海道を除く各地で繁殖する。南西諸島では一部のものが越冬もする。おもによく茂った森林の下層部にすみ,そこに広がる空間を飛び回りながら,また枝からぱっと飛び立って昆虫をとらえて食べる。さえずりはツキ(月)ヒ(日)ホシ(星)ホイホイホイと聞こえ,そこから〈三光鳥〉という名がついた。巣は細い枝のまたの部分に樹皮クモの糸を使って深いわん型のものをつくる。1腹の卵数は3~5個。抱卵,育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。サンコウチョウ属は世界中に約10種おり,アフリカからインドを経て中国や東南アジアまで分布し,どれもサンコウチョウに似ている。そのうちの1種カワリサンコウチョウT.paradisiはヒマラヤ以東のアジアに広く分布し,雄に赤色型と白色型の2型がある。白色型は頭頸とうけい)部と風切の一部を除いて白色だが,羽軸は黒い。赤色型はサンコウチョウに近い。両型の割合地方によって異なり,中国では赤3:白1,ヒマラヤ東部では赤1:白5といわれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンコウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サンコウチョウ
さんこうちょう / 三光鳥
black paradise flycatcher
[学] Terpsiphone atrocaudata

鳥綱スズメ目ヒタキ科カササギヒタキ亜科の鳥。雄のさえずりが「ツキヒホシ(月日星)ホイホイホイ」と聞こえるというので、この名がある。この亜科の鳥は、おもに南アジアからオーストラリアにかけて、またアフリカの熱帯林にすみ、約90種がある。樹冠の下でヒタキ型の採食法をとり、嘴(くちばし)は基部が幅広く扁平(へんぺい)で、先端は下に鉤(かぎ)形に曲がり、周りのひげが目だつ。サンコウチョウは、同じ属のカワリサンコウチョウとともに北に分布している鳥で、日本の本州から屋久(やく)島までは夏鳥として、奄美(あまみ)大島以南の南西諸島および台湾、バタン諸島には留鳥として分布する。本州などのものは東南アジアで越冬する。雄は尾が長く全長約45センチメートルのうち4分の3を占める。その尾と頭部から胸にかけて紫黒色、背は赤紫色、腹は白い。目の周囲はコバルト色をしている。雌は全長約17センチメートル、色は雄に似るが、背と尾は赤褐色である。平地の暗い林にすみ、長い尾を翻しながら空中で昆虫をとる。細い木の叉(また)に巣をかけ、4個の卵を産む。雌雄で抱卵し育雛(いくすう)する。

[竹下信雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サンコウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サンコウチョウ
Terpsiphone atrocaudata; Japanese paradise flycatcher

スズメ目カササギヒタキ科。全長は雄 45cm,雌 18cm。雄は尾羽が体の長さの 3倍ほどもある。頭部から胸にかけて黒紫色,背面は赤紫色,腹部は白色。雄は黒紫色の冠羽(→羽冠)もありたいへん美しいが,雌は尾が短く,全体に色が淡い。眼のまわり(眼輪)と嘴基部は美しい青空色。「つきひほし(月日星)ほいほいほい」と聞こえる声で鳴き,これがサンコウチョウ(三光鳥)の名の由来となった。地鳴きは濁った「ぎっ」という声を出す。広葉樹林にすみ,林冠の下の空間で飛びながら昆虫類を捕食する。日本,朝鮮半島南部,タイワン(台湾)フィリピン北部に繁殖分布し,マレー半島南部とスマトラ島へ渡って越冬する。

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百科事典マイペディア 「サンコウチョウ」の意味・わかりやすい解説

サンコウチョウ

ヒタキ科の鳥。翼長9cm。雄の頭,胸部は紫黒色,背面は赤紫色で,尾は長く34cmにも達する。雌の頭,胸部は黒色で,背面は赤褐色。日本,台湾等で繁殖し,冬はインドシナ,スマトラ,マレー半島等に渡る。日本では本州以南の低山や平地の林にすむ。主として昆虫を捕食。〈月,日,星,ホイホイホイ〉と鳴くといわれ,三光鳥の名がある。巣は木のまたに樹皮,コケ等で作られ,深いコップ形。

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