サンショウクイ(読み)さんしょうくい(英語表記)minivet

改訂新版 世界大百科事典 「サンショウクイ」の意味・わかりやすい解説

サンショウクイ (山椒喰)

スズメ目サンショウクイ科の鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。サンショウクイ科Campephagidae(英名caterpillar bird)は,南アジア,ニューギニア,オーストラリアを中心に分布し,アフリカにも生息するが,新世界にはまったくいない。9属約70種を含み,全長13cmから31cmと変異に富む。オオサンショウクイ(英名cuckoo-shrike)とサンショウクイ(英名minivet)の2グループに大別される。前者は灰色を主色とするじみな色をしていて,雌雄は大きく違わない。後者は赤や黄の鮮やかな色彩をもち,多くの種では雌雄の羽色がまったく異なる。

 どの種も樹上で生活し,脚は短く,地上に降りることは少ない。やや太めで先端がかぎ状に曲がった鋭いくちばしをもち,クモ昆虫,果実を食べる。昆虫の幼虫をとくに好む種もある。巣は木の枝上に小枝や根,枯草などをクモの糸でからめてつくられた浅い皿型のものが多く,木の皮や地衣類で巧みに隠されている。1腹の卵はふつう2~3卵だが,1卵あるいは5卵のものもある。雌雄交替あるいは雌だけで抱卵する。非繁殖期には群れをなして生活することが多い。この仲間は研究があまり進んでいず,分類,繁殖,行動,社会関係などよくわかっていない。

 サンショウクイPericrocotus divaricatus(英名ashy minivet)は全長約20cm,背面は灰青色で,眼先も黒く,額と腹は白い。ヒーリーリー,ヒーリーリという鳴声が,辛いサンショウを食べたようだということから和名がついた。中国東北部,沿海州朝鮮半島,日本などで繁殖し,冬は東南アジア,インドネシア,フィリピンなどに渡る。日本には4月中旬に渡来し,本州以南の温暖な地方の落葉樹林で繁殖する。しかし沖縄で繁殖するものは留鳥である。食物はほとんど昆虫とクモ類で,漿果(しようか)もときどき食べる。かなり高い枝の上に,樹皮枯枝を集めてわん型の巣をつくり,巣の外側はウメノキゴケその他の地衣類をクモの糸で張りつけてカムフラージュ。1腹の卵は4~5個。抱卵は主として雌が行い,育雛(いくすう)は雌雄でする。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サンショウクイ」の意味・わかりやすい解説

サンショウクイ
Pericrocotus divaricatus; ashy minivet

スズメ目サンショウクイ科。全長 18~20cm。額は白く,頭上から後頭,過眼線が黒色。背以下の背面は灰色,喉以下の腹面は白く,は黒いが,風切羽に白い帯がある。尾羽は長く,両端が白色で,中央部が黒い。雌は頭上が灰色。シベリア南東部から東アジア北部で繁殖し,ミャンマーからインドシナ半島東南アジア中部,北部,フィリピンに渡って越冬する。平地から標高 1500mぐらいまでの広葉樹林に生息し,樹冠部で昆虫類を採食する。日本には夏鳥(→渡り鳥)として 5月上旬に渡来し,本州から四国地方九州地方で繁殖する。飛びながら「ひりひりっ,ひりひりっ」と鳴く。鳴き声が清涼なため俳句や和歌に詠まれている。九州,四国から南西諸島留鳥として生息するリュウキュウサンショウクイ P. tegimae は胸,腹が灰黒色で,全体に黒みが強く,亜種とされることもある。近年分布が北上している。なお,サンショウクイ科 Campephagidaeは 6属約 90種からなり,おもにアフリカからオーストラリアに分布する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンショウクイ」の意味・わかりやすい解説

サンショウクイ
さんしょうくい / 山椒喰
minivet

広義には鳥綱スズメ目サンショウクイ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Campephagidaeには9属72種がある。キジバト大のオニサンショウクイや、カシラダカ大のコベニサンショウクイ、あるいは雄の下面が朱赤色、雌の下面が鮮黄色のベニサンショウクイなどがあり、エチオピア区、東洋区、オーストラリア区に分布するが、東洋区に多い。山地、山麓(さんろく)の広葉樹林を好む。

 種としてのサンショウクイPericrocotus divaricatusは、サンショウクイ属10種中の1種で、同科でもっとも北に分布する。アムール地方、中国東北部、朝鮮半島、日本などで繁殖し、冬季は琉球(りゅうきゅう)諸島以南へ移動する。全長約20センチメートル。額は白、頭頸(とうけい)部は黒色、背面は灰青色、下面は灰白色の鳥で尾が長く、樹上で静止する姿は頭を高く尾を下げた直立型である。上空をヒリヒリッ、ヒリヒリッと鳴きながら飛ぶ。主食は昆虫類である。南西諸島にのみ生息するリュウキュウサンショウクイはやや小形、背面はさらに濃色で、サンショウクイの1亜種である。

[坂根 干]

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百科事典マイペディア 「サンショウクイ」の意味・わかりやすい解説

サンショウクイ

サンショウクイ科の鳥。翼長9.5cm。尾も同長で,背面灰青色,腹面は灰白色。中国,朝鮮,日本等で繁殖し冬は南方へ去る。日本では本州,四国の低地や低山の林にすみ,太い枝の上にコケ等で椀(わん)形の巣を作る。昆虫を主食とし,ヒリヒリンと鳴く。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。

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