サーモクロミズム

デジタル大辞泉 「サーモクロミズム」の意味・読み・例文・類語

サーモクロミズム(thermochromism)

ある種の物質加熱または冷却すると、色が可逆的に変化する現象。また、この性質をもつ物質をサーモクロミック物質(材料)という。このような有機化合物の中には、圧力によって色が変わるピエゾクロミズムや、光によって色が変わるフォトクロミズムも同時に示すものが多い。

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化学辞典 第2版 「サーモクロミズム」の解説

サーモクロミズム
サーモクロミズム
thermochromism

温度の変化に伴って物質の色が可逆的に変化する現象.非可逆的色変化も含めることがある.サーモクロミズムを示す性質はサーモクロミックであるという.有機化合物無機化合物を問わず,また,溶液固体のいずれにおいてもみられる.サーモクロミズムの原因はさまざまである.有機化合物では,色の異なる化学種の間の平衡の移動に起因することが多い.たとえば,共有結合の切断とそれに伴う転移(スピロピラン類),互変異性(サリチリデンアニリン類),立体配座の変化(ビアントロン類,ポリチオフェン類,コレステリック液晶ピッチの変化)など.無機化合物では,結晶相転移(Cu2HgI4),半導体のバンドキャップの変化(ZnO),配位子場の変化(Cr2O3-Al2O3),配位子の立体構造の変化([(C2H5)2NH2]2[CuCl4])など.サーモクロミズムは,おもに示温性塗料に利用されている.それによって,高温部位だけを周囲と異なる色として目立たせることができる.また,環境によって色の変化する玩具やスキーウェアなどにも用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サーモクロミズム」の意味・わかりやすい解説

サーモクロミズム
thermochromism

固体もしくは溶液の色が温度によって可逆的に変化する現象。原因は多岐にわたるが,温度による化合物の構造変化もその一つである。たとえば,無色のスピロピランの溶液が加熱により紫色に変化するのは,閉環構造から開環した平面構造をとるためである。また,デンプン糊(→デンプン)の溶液にヨウ素を加えると紫色になるが,加熱すると無色になる。これは,ヨウ素がデンプン鎖の螺旋の中に包接されて発色し,加熱により解離して無色となる現象である(ヨウ素デンプン反応)。このほか,Ag2HgI4や Cu2HgI4の固体は結晶構造の変化に伴うサーモクロミズムを示す。また近年では,スピン状態の変化に伴うサーモクロミズムも知られている(→スピンクロスオーバー錯体)。

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