サーレハ（英語表記）Ṣāliḥ, `Alī `Abd Allāh

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

サーレハ
Ṣāliḥ, `Alī `Abd Allāh

[生]1942.3.21. バイトアルアハマル
[没]2017.12.4. サヌア
イエメンの軍将校，政治家。イエメン＝アラブ共和国（北イエメン）大統領（在任 1978～90），イエメン大統領（在任 1990～2012）。16歳で軍に入隊する。1962年9月26日，北イエメンで軍事クーデターを指揮して王制を倒し，共和制を成立させた。1974年にイブラヒム・アル・ハムディ率いるクーデターに協力，ハムディは大統領の座についたが 1977年に暗殺された。1978年7月17日，サーレハは国民憲法制定議会によって大統領に選出された。1983年国民憲法制定議会で 2期目の大統領に満場一致で再選。1990年5月22日，南北イエメンの統一（→イエメン統一）が実現し，大統領に就任。1993年4月，統一後初の選挙でサーレハ率いる国民全体会議 GPCは下院での最大議席を得た。2001年2月，サーレハと GPCは大統領の任期を 5年から 7年に，議会議員の任期を 4年から 6年に延長する憲法改正案を提出，国民投票で承認された。2003年の選挙で GPCは議会での勢力をさらに拡大し，サーレハは 2006年9月の大統領選挙で再選された。2011年，中東と北アフリカで起こった民衆蜂起（→アラブの春）を契機に，サーレハ大統領の退陣を要求する反政府デモが各地に広がった。同 2011年4月，事態収拾のため湾岸協力会議 GCCがサーレハ退陣の仲介役を買って出たがサーレハはこれを拒否。同年 6月，大統領宮殿が反政府勢力の攻撃を受け重傷を負った。2012年2月21日，大統領代行を務めていたアブドラッボ・マンスール・ハディー副大統領が新大統領に選出され，新大統領宣誓式 2日後の 2月27日正式に辞任した。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

世界大百科事典（旧版）内のサーレハの言及

【イエメン】より

…北イエメンは南イエメンのルバイイ大統領を暗殺の首謀者として非難し，国交を断絶したが，相次ぐ暗殺の真相は諸説紛々として明らかでない。78年サーレハ政権が誕生，南･北イエメン国境地帯での紛争が拡大したが，79年アラブ諸国の仲介で休戦が成立，将来の南北統合の協議に合意した。サーレハ大統領も東西両陣営の双方から援助を受けるが，米ソどちらにもくみしないと言明，バランス外交を展開し，90年5月南北イエメンの統一を実現させた。…

※「サーレハ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」